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理化学研究所は、アナフィラキシーショックの危険性が少なく、予防・治療効果の高いスギ花粉症ワクチンの臨床応用に向けた橋渡し研究をスタートさせた。スギ花粉症を、ワクチンで根本的に予防する治療法としては初の試みで、その成果に期待が寄せられている。
ワクチンは、理研アレルギー科学総合研究センターワクチンデザイン研究チームの石井保之チームリーダーらが、2種類のスギ花粉抗原を遺伝子工学的手法で合成して開発したもの。2種類のスギ花粉主要抗原を連結した組み換え融合蛋白質をポリエチレングリコール(PEG)修飾した構造になっている。
アレルギー疾患の根治療法疾患としては、特定のアレルギー物質を低濃度から高濃度へ少しずつ体内に投与する減感作療法などがあるが、アナフィラキーショックを起こす恐れがあった。
しかし、新たなワクチンは、スギ花粉抗原の天然型立体構造を破壊しているため、IgE抗体に認識されず、アナフィラキーショックの危険性が少ない。実際、100人のスギ花粉症患者血清中のIgE抗体とは全く反応しなかったという。
また、ワクチンの効果をマウスを用いて確認したところ、抗体の上昇が起こらず、高い予防効果が期待されるものだった。さらに、発症後のワクチンの治療効果を検証するため、天然スギ花粉症抗原でマウスを感作し、IgE抗体を上昇させた後にワクチンを投与したところ、再度、天然スギ花粉抗原を注射しても、IgE抗体が上昇しないことが確認され、スギ花粉症の新たな治療薬として早期開発が期待されている。
理研では、このワクチンをもとに、ヒトへの投与基準を満たしたワクチン製造、毒性試験を開始しており、秋田大学など7大学や厚生労働省アレルギー予防・治療研究班などで構成するアレルギー臨床ネットワークを介して、患者を対象とした橋渡し臨床研究を進める予定だ。
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