RBA推進で有事に強み
エイツーヘルスケア(A2)は、日本全体でリモートワークの取り組みが進む中、IT技術に強いCROとして、今後さらに施設訪問を伴わないモニタリング手法に注力していく方針である。臨床開発本部の杉山充本部長は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で臨床試験の業務が制限されている中、「いかに施設の負担を増やさずに、試験の質を維持していくかを考えさせられる毎日である。これまで培ってきたリスクベースドアプローチ(RBA)などの手法が、緊急事態宣言下で業務の継続に大きな力を発揮している。われわれは、2013年からRBAを先進的に行っており、図らずともその成果が今出ていると考えている」と語る。
A2は、伊藤忠グループ傘下の内資系CROで、伊藤忠商事が持つ独自のITソリューションの技術やグローバルネットワークを活用し、先進的な業務に挑戦することで、他社CROとの差別化を図っている。杉山氏は、「RBAやリスクベースドモニタリング(RBM)にいち早く取り組み、専門組織を立ち上げて知識を集約させている。社員全員に研修を徹底させ、実装できる環境を業界に先駆けて構築した」と業務の効率化に自信を示す。
臨床試験のデータを中央で一括管理・分析するためのRBAソフトウェアが多くのシステムベンダーから提供されているが、「われわれはそれぞれのソフトウェアの特徴を理解し、顧客の細かなニーズに合わせて使い分けている。現時点で五つのソフトウェアに対応可能であり、幅広い提案ができる」と話す。試験ごとの導入に加え、手順書の作成方法といったRBAに何が必要なのか相談を受ける場合もあり、「コンサルティング業務の引き合いも多い」という。
また、臨床試験のデータを最初からEDCシステムに記録する「eソースDDC」(ダイレクト・データ・キャプチャ)を導入した試験についても多施設第III相試験を含め、既に複数のプロジェクトで実績を持っており、今後も医療機関への普及活動を行っていく考えだ。
A2では、RBAやeソースDDCに関するノウハウの蓄積が、有事の際に強みを発揮しているようだ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、製薬企業各社の臨床試験に大きな影響を与えている中、医療機関によってはモニターの訪問規制や治験の受け入れを大きく制限する動きもあり、モニタリング業務を行うCRAにとっては厳しい環境となっている。
A2も、東京本社と大阪事業所の両オフィスの全社員が在宅勤務を行っており、臨床試験を継続させるための対応に追われている。
こうした中、A2が行った社内調査では、10日時点で、同社が受託しているほぼ全てのプロジェクトで施設訪問の制限を受けたものの、RBAやeソースDDCなどを導入している試験については、80%以上のプロジェクトで「影響が全く出ていない」、または「多少出ているが、全体のスケジュールには影響がない」との回答が得られた。RBAやeソースDDCを導入していない試験と比較すると、スケジュールへの影響は10%以上少ない結果となっている。
アンケート結果を受け、杉山氏は「われわれは、もともと在宅勤務制度を推奨、実施してきており、オフサイトモニタリングやデータ分析のノウハウを既に持っているので、特に社員は大きな混乱もなく、今まで実施してきた業務を継続できている」と話している。
その上で、「だからといって、やみくもにリモートで作業をすれば良いのではなく、このような時だからこそ施設に負担をかけないよう、何がクリティカルで、どう優先順位を立てて対応すべきか、まさにRBAを本質的に理解して対応していくというモニタリングの質(中身)も効率化することで、試験全体の質を維持した継続に貢献できるだろう。また、このような考え方や手法が今後のスタンダードになっていくはずだろう」と自信を示した。
エイツーヘルスケア
http://www.a2healthcare.com/