全世界で日常の生活様式を一変させた新型コロナウイルス感染症は15日現在、世界で1300万人以上が感染、死者数は約58万人に及んでいる。効果のある治療薬やワクチンが存在しないことが最大のネックだ。目下、国内はもとより、世界中の製薬企業や研究機関がワクチン開発で鎬を削っており、その動きは急ピッチで進んでいる。臨床試験は欧米が先行する中、国内でも6月30日から大阪大学と同大発の創薬ベンチャー「アンジェス」などがDNAワクチンの第I/II相試験を開始した。
国内初となる新型コロナウイルスワクチンの臨床試験は大阪市立大学医学部附属病院で実施される。大阪府は、自治体としてワクチンの開発支援に向け全面的にバックアップ体制を敷く。吉村洋史知事は4月、新型コロナウイルス感染症の予防ワクチンや治療薬などの研究開発に向け、大阪府・市、大阪大学、公立大学法人大阪、府立病院機構、大阪市民病院機構の6者で連携協定を締結したことを発表。研究開発の推進や治験、臨床研究の実施に向けた取り組みを進めている。
新型コロナウイルス予防ワクチンは、大阪大学の森下竜一教授が中心となって開発を進めている。このワクチンは、DNAを人に投与する注射剤で、人体の中でDNAからmRNAを介してコロナウイルス蛋白質(抗原)が合成され、免疫が誘導される仕組みである。
3月までにワクチン自体は完成しており、非臨床での動物へのワクチン投与で抗体価の上昇も確認されている。
アンジェスによると、大阪市立大病院で開始する第I/II相試験は、健康成人志願者を対象に、筋肉内接種における治験薬の安全性、免疫原性の評価を実施。目標症例数は30例(低用量群15例、高用量群15例による2週間間隔での2回投与)で、予定試験期間は2021年7月31日までとしている。
一方、厚生労働省は、ワクチン開発で基礎研究から薬事承認、生産に至る全過程の加速化により、実用化を早期に実現する「加速並行プラン」を出した。
同プランは、基礎研究と並行して早期の非臨床研究・臨床研究を実施。研究開発と同時に生産体制の整備も進めることで加速させ、薬事承認も迅速化することで、ワクチン接種開始の時期短縮に向けた取り組みも進めていくというもの。民間企業が研究開発中に並行して生産体制を整備することは大きなリスクを伴うため、早期にワクチン供給が図られるよう支援するものである。
国内でも東京を中心に都市部で感染者数が再び増加傾向にある中、新型コロナウイルス感染症の世界的流行というトンネルを抜けるにはまだ時間がかかりそうだが、有効なワクチンの開発、必要な人への接種が早期に実現されることを期待したい。