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デキサメタゾンに続くコロナ薬は

2020年07月31日 (金)

 新型コロナウイルス感染症の国内で2番手となる治療薬に、ステロイド系抗炎症薬のデキサメタゾンが位置づけられた。17日付で「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」が改訂され、正式に記載されたもので、英国のランダム化比較試験で投与患者群の致死率低下が確認されたことなどが根拠となっている。

 英オックスフォード大学が主導して実施した臨床試験では、デキサメタゾン投与で人工呼吸器が必要な患者の致死率の低下が認められたことから、米国でも治療ガイドラインを改訂し、新型コロナウイルス感染症患者にデキサメタゾンの使用を推奨している。

 デキサメタゾンは、新型コロナウイルス感染症を効能・効果としていないが、既承認薬であるため、承認手続きなしに医療現場で使用できるようになった。しかも、デキサメタゾンは、50年以上の長い使用経験の蓄積がある古い薬で薬価も安い。

 治療薬と言えば抗インフルエンザ薬「ファビピラビル」一辺倒だった国内の動きから見ると、ランダム化比較試験の洗礼を受けた“伏兵”が登場したとも言えそうだ。まさに現在、「第2波」の到来とも見られる状況下で、重症患者の増加が懸念されている中、使いやすい治療薬の登場は朗報となったのは間違いない。

 新型コロナウイルス感染症治療薬の開発は、その緊急的な状況からも、国内では既存薬のドラッグリポジショニングが主流となっている。

 実際、承認申請に近いと見られる薬剤で名前が挙がっている代表的なものは、蛋白分解酵素阻害剤「ナファモスタット」、抗IL-6受容体抗体「トシリズマブ」、TLR4アンタゴニスト「エリトラン」、高度免疫グロブリン製剤「TAK-888」、セリンプロテアーゼ阻害剤「カモスタット」などがある。

 このうち中外製薬のトシリズマブと武田薬品のTAK-888については、年内に承認申請予定としており、エーザイのエリトランも年内に治験結果が判明する見通し。小野薬品のカモスタットも臨床試験の結果が今秋までにまとまる予定としている。

 ナファモスタットについては臨床研究であるものの、ファビピラビルとの併用療法について、人道的使用による観察研究の結果、11例中10例で臨床症状の軽快が見られたことが発表されている。

 新型コロナウイルス感染が「第1波」より全国的に拡大している状況を踏まえると、いずれの治療薬開発も年内が一つの勝負所となるだろう。承認申請後はPMDAの審査力と厚生労働省の判断となるが、結果次第では特例承認の扱いとなる可能性もある。また、今回のように、海外の臨床試験結果から既存薬を手引きに位置づける流れもある。

 最近は、いわゆる「夜の街」以外にも家庭内など、身近なところで感染が広がっているだけに時間的な余裕は少ない。特に高齢者の重症化を食い止めるため、国内でもあらゆる角度から一つでも新型コロナウイルス感染症に有効な治療薬を確保したい。



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