訪問業務支える電子薬歴‐貢献価値の可視化実現
hitotofrom(松岡光洋代表取締役)が運営する「まんまる薬局」(東京都板橋区)は、2018年4月に開局した。同薬局は個人の在宅患者に向けた「訪問薬剤サービス」に特化しているが、そうした日々の業務には、PHCの保険薬局用電子薬歴システム「PharnesV」やカケハシの薬局体験アシスタント「Musubi」が欠かせない存在となっている。さらに松岡氏は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で働き方等にも変化が見られる現状や今後を見据え、PHCが現在開発中の次世代のクラウド型のレセコンへも期待を寄せる。
開局して3期目を迎えた「まんまる薬局」は現在、薬剤師が9人、非薬剤師のスタッフが13人という構成になっている。外来にも対応しているが、個人の在宅患者対応に特化していることが大きな特徴。処方箋を応需するのは約190の医療機関で、板橋区、練馬区、豊島区を中心に居宅の訪問回数は19年度の実績で年間約1万1000回に上る。開局以降、着実に支持を獲得していると言えよう。
同薬局の立ち上げについて松岡氏は、「患者さんは薬局に薬をもらうために来ているが、来たくても来られない患者さんもいる。そこに訪問サービスのニーズがある。今後の超高齢社会の進展を見据えれば、訪問のニーズが拡大することは確実」とし、「処方箋を持った患者さんを待つという姿勢だけでなく、薬局側が能動的に動き外へ出ていく必要があると考えて立ち上げた」とする。
個人の在宅患者対応に特化するという特徴を持った同薬局の業務を支えるため導入したのが「Musubi」だ。松岡氏は「薬剤師のアクションまでを踏まえたプロダクトは他にないと考えて導入した」と説明。「今後の薬局や薬剤師の役割は、ただ薬を渡すだけではなく、貢献価値の見える化が必須。そうした側面も、Musubiの導入によって実現できている」と語る。
その後、「PharnesV」を導入。同システムは、患者の薬歴表紙、監査情報、過去薬歴などを一度に表示できるほか、今回処方と過去4回分の調剤内容、指導内容を横並びで表示し、変遷を容易に確認できるといった特徴を備えており、日々の薬局業務の質向上や効率化等につなげている。また現在、「Musubi」と「PharnesV」を連携させて活用しており、松岡氏は「患者さんの自宅での後会計に対応できたり、頭書きメモなども連携によって訪問先と薬局内とで共有できる」とメリットを挙げる。
薬局業務の在宅化も現実味
一方、今年に入り、国内でも新型コロナウイルス感染拡大の影響が現れている。それは働き方にも及んでおり、在宅ワークなどが実際に取り入れられている。松岡氏は、「薬局の業務においても在宅ワークが現実味を増している」と指摘。「レセコンの入力などが自宅で可能になれば、スタッフが必ずしも薬局内にいなくても良い」との考えを示す。
このような考えを踏まえて松岡氏が期待を寄せるのが、PHCが現在開発中の次世代のクラウド型レセコン「Medicom-PH」だ。「Medicom-PH」は場所を選ばないクラウド型のシステムのため、働き方の選択肢を広げられ、例えば在宅ワークでの調剤事務が可能になる。松岡氏は、「薬局に出社できなくても仕事ができるということで、産休や介護などで辞めざるを得なかったケースなどがなくなり、人材の確保という面にもつなげることができる」と話す。
また「Medicom-PH」のコンセプトは、電子薬歴をはじめとした様々なシステムと連携し、顧客にフィットした運用スタイルを実現することだという。松岡氏は、「待っていれば処方箋を持った患者さんが来局されるという姿勢の場合、それに対応できる環境が薬局内に整っていれば良いという考え方だった。しかし今後を見据えると、薬局が能動的に動くことも必要。われわれの薬局のように能動的に動くということは薬局の外にも積極的に出ていくこと。患者さんへの様々な対応を薬局外でも行えるのは非常にありがたい」と述べ、それらを可能とする「Medicom-PH」について「能動的に動く薬局には必然的に必要になってくるシステム。在宅対応している薬局と非常に相性が良い」と評価する。
新型コロナウイルスの影響で今後がなかなか見通せない状況が続いているが、松岡氏は「医療者として多職種協働に積極的に介入して、患者さんのQOL改善につなげるといったことがわれわれの使命。そこはリスクを冒してでも能動的に動き、医療のインフラになっていかなければならない」と強調。
今後も、個人の在宅患者に向けた訪問サービスに特化した形を貫き、地域医療へ貢献していくと共に、薬剤師が輝ける場の創出を目指していく考えだ。
まんまる薬局(PHC)
https://www.phchd.com/jp/medicom