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【第53回日薬学術大会】法改正で問われる薬局機能‐日本薬剤師会 山本 信夫会長に聞く

2020年10月07日 (水)

第53回日本薬剤師会学術大会

地域で求められる役割を

山本信夫氏

 昨年末に公布した改正医薬品医療機器等法は9月に関連省令の第1弾が施行され、薬局薬剤師に対して服薬期間中の継続的な患者フォローが義務化された。来年には、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局など特定の機能を持つ薬局の認定・表示制度も導入される予定で、改正薬機法への対応は待ったなしの状況だ。新型コロナウイルスの感染拡大で処方箋枚数が減少し、薬局経営に打撃を与える厳しい状況下で、日本薬剤師会学術大会で大会長を務める日薬の山本信夫会長に、4期目となる新体制の舵取りや改正薬機法への対応、薬剤師や薬局のあり方がどうあるべきか聞いた。

薬剤師に変革促す趣旨‐地域の医薬品供給拠点に

 ――4期目の新体制を始動し、どのような重点課題に取り組んでいくか。

 改正薬機法への対応が最重点課題だ。2014年に旧薬事法から医薬品医療機器等法に改正され、5年後に見直しが行われたわけだが、新たに何かを追加したというより、法律のコンセプトが大きく変わったという認識を持っている。日本で薬剤師、薬局の制度ができたといわれている1889年成立の「薬品営業並薬品取扱規則(薬律)」から幾度となく改正が行われてきたが、その中でも最も大きいパラダイムシフトが起きた大改正と言えるかもしれない。

 服薬期間中の継続的な患者フォローや地域連携薬局や専門医療機関連携薬局に薬剤師や関係者の注目が集まっているが、法律全体を俯瞰してみると、調剤だけではなく、患者や地域住民に必要な医薬品を扱い、情報提供や服用している薬の相談にも応えられるよう薬剤師がしっかりと対応していくことが盛り込まれている。調剤だけを行う、OTC医薬品だけを販売するといった薬局については明確に否定しており、薬局や薬剤師が地域にとってなぜ必要かを考え、医薬品供給で重要な拠点になることが求められていると言えるのではないか。もちろん、こうした機能は既に望まれていたものであったはずだが、十分に実行されてこなかった点を法律によって明確にした上で、薬剤師に現状の変革を促そうとしているのが、今回の改正薬機法の趣旨だと考えている。新執行部では改正薬機法が伝えているメッセージを正確に読み取り、薬局が地域の医薬品供給拠点として変わっていくために取り組んでいく。

 ――新執行部には日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会からも人材を登用した。

 改正薬機法ではこれまでのように「薬剤師は医師の処方箋に基づいて調剤する人」「薬局は調剤する場所」という概念を大きく変えて、医薬品に関する様々なことにどう対応していくかを薬剤師・薬局の両者に求めている。

 こうした問題に対応していくためには、医薬品の地域への提供に関わる他団体との連携も必要になる。両団体とはアプローチが違っていても薬剤師として目指すところは共通していると認識している。医薬品を扱う職業団体と薬剤師の職能団体とでは立ち位置に違いはあるが、一緒に取り組んでいく意義は大きいものと考えている。

分業のあるべき姿目指す

 ――「医薬分業対策委員会」を解消して「地域医薬品提供体制対策委員会」に名称を変えた。

 薬局での処方箋受取率が1991年には13%、2003年に50%を突破し、平成の30年間で1974年当初の目標値である70%を超えた。

 当初の数量的な目標は達成できたと思っているが、いわゆる医薬分業が現実のものとなった院外処方箋の発行がスタートした初期に描いていた先達のイメージで現状や社会的な要求や自らの目指した方向に進んできたかと問われると、確信を持って十分とは言えず、「応えられた部分と応えられなかった部分がある」と感じている。

 「医師が処方し、薬剤師はその処方箋に基づき調剤する」という形式論は達成できたが、調剤した結果、薬剤師も患者の薬の服用状況をきちんと管理することが、過不足ない社会への医薬品提供体制の確保と共に、医薬分業の本来のあるべき姿だと思う。

 ただ、いつの頃からか「処方箋の発行・応需」という理解で「医薬分業」が捉えられ、現在に至っている。これまでの医薬分業運動は処方箋獲得と変わらないという社会の指摘についての反省がある。

 委員会名から医薬分業という言葉をわざわざ外し、医薬品の提供体制に焦点を当てて、本来の「医薬分業制度」を目指すために名称を変更した趣旨で、医薬分業を捨てたわけではない。

 医薬品の役割は多様化し、時代と共にその使い方も変わっている。必要に応じて医療の中にもOTC医薬品を使っていくことも考えなくてはならない時代の足音が聞こえる。

 そのような時代に向けて、医薬品を供給する薬剤師が医薬品のコントロールをする必要があり、処方箋の応需だけにとらわれた「医薬分業」と言う概念では今後、地域で求められる医薬品の提供体制を組むことはできない。

継続的な服薬指導の義務化‐本来やるべきことを明文化

 ――改正薬機法では地域連携薬局と専門医療機関連携薬局が新たに設けられる。

 9月には薬機法の省令改正第1弾が施行され、調剤後の患者フォローが義務化された。来年8月施行では都道府県知事が特定の機能を持った薬局を認定する「地域連携薬局」や、専門医療機関と連携して、癌などの専門的な薬学的管理に対応できる「専門医療機関連携薬局」が新たに設けられる。

 薬機法改正を議論した厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、薬剤師の業務が見えないと指摘され、時として「薬剤師不要論」と思える議論もされた。地域住民が自分に合った薬局を選べるように地域連携薬局や専門医療機関連携薬局という機能を新たに位置づけたことには意味があるが、それだけで地域の中で薬剤師の役割が見えやすくなるのかと言えば、簡単なことではないと考えている。

 例えば、医療機関にも一般の病院と高度な医療を提供する特定機能病院が機能別に区分されているが、患者から見たときに特定機能病院の機能を正しく認識されているのかは定かではない。われわれも単に地域連携薬局や専門医療機関連携薬局を標榜するだけでは十分ではなく、その薬局(薬剤師)が地域の医療機関や他の薬局といかに連携して、持てる機能を十二分に果たしていかなければならない。

 薬局・薬剤師側で大きな変革が起こらないと、真の意味で地域連携薬局や専門医療機関連携薬局は生まれてこないと考えている。まずは、社会から期待される薬局が増加し、その後に新たな機能を有した薬局がだんだんと新たな機能を有した薬局として成長していくので、増加するのはまだ少し先の話ではないかと思う。

 ――継続的な服薬指導が義務化となった。

 日薬では、9月に服用期間中の患者フォローアップなどを義務づけられたことを踏まえ、7月に「薬剤服用期間中の患者フォローアップの手引き」を作成した。次回来局時までにフォローアップが必要となる患者の考え方や患者への確認事項などについて解説しているので、活用してほしい。

 しかし、その前に、患者のフォローアップについてなぜ薬機法で明文化されたのかをもう一度考え直してみる必要があるのではないだろうか。患者が安全に服薬し、調剤時だけではなく継続的に服薬指導していくために、薬剤師がしっかりと対応していく必要性は10年以上にわたって指摘されてきたし、患者のための薬局ビジョンや薬剤師法でも示されている。

 しかし、薬剤師が行う服薬指導は診療報酬という保険の世界だけで評価されていたのが実態だった。報酬と直結することとなり、本来「患者の服薬状況等を把握し確認し観察することも薬剤師の任務」であることを、忘れてしまったのではないだろうか。

 薬機法で継続的な服薬指導が義務化されたことにより、法的根拠に基づいて薬剤師に一定の水準までの仕事をさせ、その業務の質を診療報酬・調剤報酬が評価していくという流れに変化していくものと認識している。その一方で、継続的な服薬指導ができない薬剤師は診療報酬上の問題とは別の次元で責任が問われてくる。法律で薬剤師がやるべきことを明示し、その成果を診療報酬や調剤報酬が評価していく意味では大きな変化だと思っている。

コロナ禍、薬局はより重要に‐薬剤師需給、適正数議論を

 ――新型コロナウイルス感染症への対応が薬局経営にダメージを与えている。薬局のあり方は。

 新型コロナウイルス感染症の影響は極めて甚大だ。経済への影響はリーマンショック以上だと言われている。

 日薬が実施した調査でも、2月から処方箋受付回数が落ち込み、6月に一時的に回復したが、7月にまた悪化した。新型コロナウイルスが経営に与えるダメージは計り知れない。受診や来局に行くことを控える患者も多い。病院の外来患者が減ると、薬局への来局者の減少につながるため、経営環境の厳しさは今後も続く可能性がある。

 ただ、新型コロナウイルスと共存するウィズコロナ時代では薬局の位置づけはより重要性が増すと考えている。他の医療職種と同様に薬局や薬剤師も新型コロナウイルスから逃げることは許されない状況にある。感染リスクに配慮しながら、地域の医療における医薬品提供拠点としての役割を果たしていく必要がある。

 医療職種として主役にはなれないかもしれないが、地域医療提供体制を確かなものとする上で、医療提供側の主役を支える重要な役割を担う出演者の1人であるという自負は忘れずにいたい。

 処方箋が増えるのはまだ先かもしれないが、地域の中で医薬品供給拠点としての責任をしっかりと果たせれば、存在感を高めることはできる。

 ――薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会で、薬剤師の需給調査が始まった。

 国内の薬剤師総数は約32万人と海外に比べて多すぎるとの指摘がある。薬剤師の数を減らすと患者や住民にとっては、薬剤師から受けられる恩恵が減るわけで、そのためには一定の人数は必要になる。薬剤師が社会からの期待に応えられていないという批判は真摯に受け止めるが、薬剤師がいらないという主張はいささか乱暴な議論だと思う。

 わが国で必要とされる薬剤師の数がどの程度なのかをきちんと議論した上で、需給を検討してほしい。現状の調査だと薬剤師の供給が需要を上回るとの結果もあるようだが、何を基準にしたら薬剤師が余るのか示さないといけない。

 例えば、東京でも薬剤師から医薬品を供給されていない地域がある。無医村と同じように無薬局地域があるのもまた困る。団塊の世代が75歳以上となる25年には地域包括ケアシステムの構築が叫ばれており、小中学校区域に一定程度の薬局がなくてはならないとされている。

 薬剤師の適正数がどの程度であるか即断することは容易ではないが、日本の国民が等しく薬剤師サービスを受けられない状況を作ってしまってはいけない。そこはわれわれにも責任があるのでどういう役割を演じるかしっかりと考えていかないといけない。わが国で「薬剤師が何も知らないところで薬が使われる」という環境だけは作りたくないし、そういう環境にはしたくない。

 かねてから日薬では、薬学部の増設に反対する姿勢を示してきた。ただ各論的に言えば、もし地域に薬学部がないことが薬剤師偏在の理由だとするならば、増設するべきとの意見があるのも間違いない。本当にその地域に薬学部を創設する必要があるのかについて真剣に考えなければならない。

配信併用し学習機会確保

 ――新型コロナウイルスで薬剤師の自己研鑽の場が減る中、学会開催の意義は。

 現地とウェブを併用したハイブリッド方式で開催することになった。感染防止対策を十分講じた上で現地での開催は人数を制限し、ウェブを活用する。北海道薬剤師会も相当な設備投資を行い、開催に向けて精力的に努力をされた。

 新型コロナウイルスの影響で薬機法改正や20年度診療報酬・調剤報酬改定の趣旨も十分に説明できていない。コロナ禍で規模を縮小してでも開催を決めた道薬の判断に敬意を表すると同時に、できるまで応援をしたい。

 土曜日に休めない薬剤師でもウェブから参加でき、生の臨場感を味わうことができなくても、議論に参加できる。離島や僻地にいる患者へのオンライン診療と同じように、僻地にいる薬剤師が勉強する場としてあらゆる手段を認めてあげないといけない。

 そのためには、今後はライブ配信だけではなくオンデマンド配信での対応も必要だろう。薬剤師会として学習機会を提供していけるようにしたい。

 対面での会議も必要と考えているため、今回のハイブリッド開催は今後の学術大会に向けた試金石になる。薬剤師の皆さんには、どういう形にせよ学術大会に参加していただきたい。

 ――会員に向けたメッセージは。

 薬剤師が世の中で正しく評価されていくことが重要だと考えている。薬剤師の皆さんが一所懸命に現場で仕事をしているにも関わらず、正しく評価されていないことについては、薬剤師会としては精一杯皆さんを後押ししていきたい。

 薬剤師がいなければ日本の医療は成り立たないし、国民の健康を守れないのも事実。そのためには薬剤師会は覚悟を持って取り組まないといけない。医薬品を供給するところには薬剤師が必ず関わり、地域に医薬品を届けるための仕事を全力でサポートしていきたい。

 今回の薬機法改正は130年ぶりの大きな改正で、薬剤師にまた薬局に変革を促していることを忘れてほしくない。そのためにも、私も生涯薬剤師に矜持を持って臨みたいし、薬剤師である以上会員に皆さんと共に「薬」にこだわっていたい。




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