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卒後臨床研修の議論は慎重に

2020年10月30日 (金)

 薬剤師の卒後臨床研修が議論の焦点に急浮上している。きっかけは、厚生労働省の「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」で、委員からは法制化を求める意見が相次いでいる。同検討会は、薬剤師の教育から薬科大学のあり方まで幅広く議論するものだが、わずか数回で卒後臨床研修の義務化に向けた流れが作られつつある。

 卒後臨床研修をめぐっては、10年以上前に薬剤師レジデント制度を導入する病院が登場し、これまで試行錯誤を繰り返しながらレジデント制度の検討が進められてきた。実際、レジデント制度を導入する医療機関は増えている。名古屋大学病院薬剤部長の山田清文氏らの研究グループによる調査では、カリキュラムに基づく1カ月以上の卒後臨床研修を実施している施設は約3割に達していた。

 一方、同調査では、規模が大きく薬剤師数が多い病院ほどカリキュラムに基づく研修の実施率が高く、逆に規模が小さく薬剤師数が少ない病院ほど実施率は低いことも示された。つまり、中小が大半を占める約7割の施設では、カリキュラムに基づく1カ月以上の卒後臨床研修は難しい現状と見ることもできる。

 レジデント制度は、日本における薬剤師の卒後臨床研修のあり方を考える契機になるのは間違いない。ただ、かなり充実してきたとはいえ、未だレジデント制度は発展途上の制度であり、厚生労働研究で体制整備に向けた課題抽出などが進められている最中でもある。

 こうした中、国の検討会で薬学部を卒業した薬剤師に卒後臨床研修を義務づける方向の議論が浮上してきた。標準化されたカリキュラムをベースに適用する可能性を考えても、現時点で法制化の是非を判断するには材料が少なすぎるのではないか。むしろ、拙速な議論がかえって、これまで積み上げてきたレジデント制度などの取り組みと成果に傷を付けることにもなりかねない。

 同検討会での意見は、大学教育や実務実習の問題点などについて、どこまで理解した上での発言であるかは分からないが、もし深い考察なしに卒後臨床研修の義務化ありきで議論が進もうとしているのであれば問題である。

 卒後臨床研修といっても、どう受け入れ体制を構築するかは極めて難しい問題だ。来年8月には、改正医薬品医療機器等法による薬局認定制度の開始が控える。特に専門医療機関連携薬局の認定に向けた日本医療薬学会の「地域薬学ケア専門薬剤師」、日本臨床腫瘍薬学会の「外来がん治療専門薬剤師」では、病院での研修が柱となる。

 医療機関側の受け入れ体制の負担を考えると、さらに卒後臨床研修の受け皿を用意できるかマンパワーの点からも微妙なところだろう。卒後臨床研修については、現行の実務実習の検証などとセットで議論していく必要がある。それだけに、今後の議論は拙速に進めず、一つひとつの問題を解消しながら慎重に進めてほしい。




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