今春は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が発令され、飲食業を中心に休業要請がかかる中、OTC医薬品をはじめ、日用品や生活雑貨などの供給において、薬局、ドラッグストアの役割や重要性を生活者は再認識したことだろう。
一方で、「3密」の回避やソーシャルディスタンスなど、ウィズコロナ時代の新たな生活様式が取り入れられ、生活者は医薬品購入時の相談対応では時短を希望し、よりセルフ化の傾向が増しているように感じる。
逆にそうした時期だけに、医薬品の適正販売については妥協なく取り組むことがより重要になる。
9月に厚生労働省が公表した2019年度の「医薬品販売制度実態把握調査」(覆面調査)の結果では、薬物依存の原因とされるエフェドリン、コデイン、ジヒドロコデインなど6成分を含有する「濫用のおそれがある医薬品」の販売について、店舗販売の結果では「質問等されずに購入できた」事例が大幅に減り、改善傾向が示された。ただ、依然として遵守が徹底されていない店舗やインターネット販売サイトが存在することも分かった。
特にインターネット販売では、適切な販売の遵守率が5年続けて50%を下回る結果が出ている。これらの結果をもとに、厚労省は都道府県に対して通知を発出し、事業者への遵守徹底を呼びかけた。
現状を受け、本腰を上げて取り組もうとしている自治体も出ている。同調査で、濫用などのおそれのある医薬品の複数購入しようとした時の対応で「質問等されずに購入できた」のが全国平均で30.6%だったのに対し、49.6%と高い水準だった大阪府は、9月24日付で関係3団体に適正販売遵守を求める通知を発出。また、今月21日付で不適切事例が確認された薬局・店舗に対して、注意喚起の通知を発出するなど販売ルールの徹底を個別に求める取り組みを行った。
覆面調査の対象店舗数は限定的で、全ての実態を表したものではないが、09年度から毎年実施されている調査で未だにルールを逸脱した医薬品の販売が行われていることは由々しき問題である。このことは、現在スイッチ化が俎上に上がっている医療用医薬品成分のほか、処方箋なく薬局での入手に向けた動きが注目を集めている緊急避妊薬のスイッチ化の動向にも影響してくるかもしれない。
9月の改正医薬品医療機器等法の一部施行で、薬剤服用期間のフォローアップが薬剤師に義務づけられた。薬剤師のみ、処方箋医薬品のみということではなく、OTC医薬品も含め、医薬品販売に従事する全ての人が、改正法を念頭に日々の業務取り組んでいく必要があるだろう。