ファーマサミット
「バイオジャパン2008」が15017の3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開かれ、2日目の「ファーマサミット」には、第一三共の庄田隆社長、協和発酵キリンの松田譲社長らが出席。製薬産業のR&D活動の国際化をテーマに議論を行った。パネル討論では、日本の製薬企業による国内ベンチャーへの投資が問われたが、パネリストからは、まだ発展途上で提携条件が整っていないとの認識が示され、現段階の投資には慎重な声が上がった。
庄田氏は、日本製薬工業協会が調査した日米欧の製薬企業30社の特許出願件数を示した上で、「研究開発投資が必ずしも日本に向かっていない」と指摘。実際、日本に特許を出願した外資系企業は、相次いで国内の研究所閉鎖を決定し、研究開発拠点を中国の上海、インド、シンガポールに移行していることを挙げ、「研究開発の国際化は新興国に拡大しており、日本の創薬拠点としての地位が下がりつつある」と危機感を示した。国内製薬企業も海外での研究開発を拡大しているのが現状だが、庄田氏は「日本を世界中から創薬のプレイヤーが集まるような場にしたい」と述べ、産業と行政が一体となった取り組みの必要性を強調した。
抗体医薬を強みに協和発酵キリンをスタートさせた松田氏は、「初期投資や製造コスト高などの理由から、これまで大手製薬企業は抗体医薬の開発に手を付けなかった」と指摘。欧米では市販品・臨床開発中のバイオ医薬品の9割が、ベンチャー企業から創出されているとのデータを示した上で、最近のバイオ企業の買収劇を「技術の飛躍的な進歩によって抗体医薬の事業性が著しく拡大し、リスクが低くなっているため」と分析した。
一方、日本ではベンチャーの存在感がまだ薄いのが現状。スイス・ロシュのダン・ザブロウスキ氏は、国内製薬企業との活発な提携例を挙げ、「日本はイノベーションの発祥地として有望」としながらも、「なぜベンチャーの生産性が上がってこないのか」と疑問を投げかけ、国内ベンチャーとの連携には時間をかけていく考えを示した。
パネル討論では、日本のベンチャーへの投資が話題に上がった。庄田氏は「日本の企業が目利きがないから優れたシーズを発掘できないとの声もあるが、全ての企業がそうではない」とした上で、「知的財産をめぐる条件など、提携に当たってそれぞれの考えを情報交換する場を持つことが必要」との考えを示した。
ただ、エーザイ常務執行役研究開発担当の吉松賢太郎氏は、「多くの日本のベンチャーは中途半端で、製薬企業に資金を頼らざるを得ない」と厳しい見方を示し、「もっとベンチャーを育成して、レベルを上げてもらえれば、妥当な金額での提携ができる」と述べ、現段階では製薬企業側の負担が大きいため投資できないとした。松田氏も「ベンチャーの中身にはバラツキがあり、実際の製品ベースのビジネスは非常に少ない。優れたベンチャーもあるが、まだ発展途上の段階」との認識を示した。
相次ぐ日本からの撤退”探索研究こそ国内で
また、外資系企業の国内研究所が相次いで閉鎖されたことを受け、探索研究を日本で実施する意義についても議論が交わされた。庄田氏は「いかに密接な研究の情報交換をするかが大切で、場所は議論の対象にならないのでは」との考えを示した。
吉松氏は「日本人の持つ研究への熱い気持ちが、創薬を国内で実施するメリットになる。いかにグローバル化しても最終的には日本が大事だ」と強調。松田氏も探索研究に25年間携わってきた経験を踏まえ、「必ずしも研究開発費に比例して製品は出てこない。研究には経験や勘、思い入れがないと成功しない」と力説し、「探索研究こそ日本人に向いている研究で、国内から撤退したのは大きな判断ミスではないか」と日本の創薬力への自負をのぞかせた。