長谷川社長
武田薬品の長谷川閑史社長は4日、都内で開いた中間決算説明会で、次世代の大型製品と位置づける米国申請中のDPP4阻害薬「SYR‐322」、抗潰瘍薬「TAK‐390MR」の審査が延期されたことに関して、「FDAの審査状況に大きく落胆している」と強い不満を示した。特にTAK‐390MRは、プレバシドの後継品として米国市場への投入を急いでいる製品だけに、長谷川社長は「承認の遅れによる業績への影響を危惧している」と懸念を述べた。
武田薬品は、2010年度に医療用医薬品の売上高1兆4000億円を目指す中期経営計画を策定。開発パイプラインの充実に向け、米アムジェン日本法人、ミレニアムを買収するなど、積極的な導入活動を進めてきた。
長谷川社長は「統合プロセスが順調に進んでシナジー効果が予定通りに実現し、中計期間中に申請できる開発パイプラインの姿がはっきりしてきた」としながらも、「まだ満足できるレベルには達していない」と強調。「特に米国で主力品の特許が切れる2010年問題を考えると、後期段階にパイプラインが充実していても十分ではない」との認識を示した。
ただ、さらなるM&Aについては、「現状では次々に買収していくだけの人的リソースはなく、そんな余力はない」と否定。「新たに子会社化したTAP、アムジェン、ミレニアムの融合に時間をかけ、ベストプラクティスを生み出すことに、最大限の力を集中させたい」との方針を強調した。
また、世界で深刻化する金融危機の影響に関しては、「景気の低下が米国における売上減につながっている」とした上で、「これまで米国は、先進国で突出して高い医療費だったが、それも限界に近づきつつある。今後、薬剤費は日本並みにしか伸長しないと考えた方が無難ではないか」と述べた。