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ワクチン接種、自治体と連携重要

2021年03月12日 (金)

 来月以降、まずは高齢者を対象にした新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種が各地で始まる。接種方法には地域の医療機関で接種する場合と、集団接種会場で接種する場合の二つの方法があるが、集団接種体制を構築する上で、地域の薬剤師がどのような役割を担うことになるのか関係者の注目を集めている。

 集団接種会場では、多数の住民に効率良くワクチン接種を行う必要がある中、薬剤師が担当できる業務として、ワクチンの希釈やシリンジへの充填などが示されている。実際に担う役割は地域によって異なり、集団接種会場における職種の配置はワクチン接種の主体となる各市町村の行政の考え方に委ねられる。

 各市町村の行政担当者は、ノウハウに乏しい中で、どのような体制を構築すればトラブルなくワクチンを接種できるのかについて、関係者の意見を踏まえ、走りながら考えているのが実情だろう。今後、急ピッチで体制づくりが本格化する。果たして各地で薬剤師はどこまでの役割を担うことになるのか。あるいは、薬剤師に声はかからないのか。

 一つの事例として、神戸市では行政担当者と薬剤師、医師、看護師らが日頃から良好な関係を築いており、今回も早期から連携してワクチンの接種体制のあり方を話し合ってきた。

 討議を進める中で、「お薬手帳等を用いた予診前の服薬状況の確認は薬剤師に担当してもらいたい」との声が医師や看護師から上がるようになったという。既に集団接種における薬剤師の役割はほぼ固まりつつある状況だ。当初の見込みよりも役割は広がり、ワクチンの希釈やシリンジへの充填に加えて、薬剤師は服薬状況確認の業務も担うことになりそうだ。

 今回のワクチン接種を機会に改めて認識したいのが、市町村単位の自治体と薬剤師の関係づくりの重要性だ。各市町村には、住民の健康維持や疾病予防、疾患の治療などを推進する義務がある。

 ワクチン接種への関与は、その推進に必要な社会インフラの一部として、薬局や薬剤師が存在感を高める好機になる。ここで存在意義を十分に示すことができれば、これからの各自治体の施策にも、薬局や薬剤師の存在が反映される可能性が高い。

 以前から各地で自治体と薬剤師が連携した取り組みが実施されている。地域の医師と連携し糖尿病性腎症患者の重症化を予防する事業や、薬局で薬剤師がHbA1c値などを測定して糖尿病の早期発見につなげる事業、ポリファーマシーを抑制する事業などが行われてきた。

 今後も様々な切り口で、薬局や薬剤師が社会インフラとして力を発揮できる場面は訪れるだろう。その時、行政担当者から依頼を引き出すためには日頃のコミュニケーションが必要だ。依頼にはしっかり応え、信頼や実績を積み重ねていくことも重要になる。



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