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ワクチン配送の仕組みが課題に

2021年03月05日 (金)

 先月から医療従事者に対する新型コロナウイルス感染症ワクチンの先行接種が始まった。今月には全国約470万人の医療従事者への接種が開始され、4月以降に65歳以上の高齢者、その後に基礎疾患保有者や介護関連従事者、そして一般市民へと続く方針で進められている。

 今回のワクチン接種は、希望する全国民を対象としたもので、かつてない規模となる。こうした中で、既に全国各地でワクチンの集団接種などに対応するための訓練が実施されている。

 大阪府は、府下の医師会、看護協会、薬剤師会と連携した形で、市町村での集団接種を想定した訓練を開催した。これら訓練の成果を踏まえ、「集団接種マニュアル」を策定し、今後のワクチン接種の実施主体となる市町村に活用してもらう考えだという。

 国内で特例承認されたファイザーのmRNAワクチン「コミナティ筋注」は、生理食塩液で希釈後、室温で6時間保管可能とされているが、通常のインフルエンザワクチンなどと比較しても保管できる時間は短い。その意味ではワクチン解凍後における希釈、シリンジへの薬液充填作業ではスピーディーな対応が求められる。

 ワクチンの集団接種では、滞りなく進める必要がある。そのためには、医師や看護師に加え、薬剤師の役割も期待される。府の訓練では、薬剤師が予診票確認、ワクチンの希釈、接種済み票の交付、接種後の状態観察などの役割を担い、一定の成果が見られた。

 現在、全国の各自治体で同様の訓練が実施されている。各都道府県は、実施主体となる各市町村での円滑なワクチン接種が行えるよう後方支援の役割を担う格好となる。現場では接種会場の運営についての訓練などが行われているが、それ以外に今後、課題となりそうなのはワクチンの配送である。

 現在、体制として決まっているのは、集団接種などの会場にワクチンや注射針やシリンジを届ける流れのみ。一方で、各自治体レベルの取り組みでは、診療所で行う個別接種と市民体育館などの公共施設で行う集団接種の併用を視野に入れるところもあるが、市町村のワクチン集積所から個別の診療所へのワクチン移送の仕組みが、まだ未整備のままということが気になる。

 自民党の合同会議や日本医師会は、個別接種におけるワクチン輸送について、専門の医薬品卸売業者の協力を求めているが、厳格な低温管理が必要なワクチンだけに、小分け移送のロジスティクスでは都市部と地方、さらに山間僻地などエリアによってはマニュアル通りにいかない出来事も予想される。

 地域の実情に応じた柔軟な対応ができるような仕組みの構築が課題になる。行政、医療従事者、物流業者、そして市民も含め、ワクチン接種の善処策について走りながら考え、取り組んでいく1年になるだろう。



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