23日に61歳の誕生日を迎えられた天皇陛下が記者会見で、「この1年は、コロナ禍に翻弄されてきました」と述べられた通り、世界中が新型コロナウイルス感染症との闘いに明け暮れている。
日本でも、欧米等に遅ればせながら新型コロナウイルスワクチンの接種が17日から始まった。14日に特例承認されたばかりのファイザー製のワクチンが供給され、まずは先行接種として医療従事者を対象としている。逼迫した医療現場で死者を出さないために全力を挙げるしかなかった受け身の状況から、感染拡大軽減、重症化防止へ向けて積極的な攻勢に転じる第一歩を踏み出したことは確かだ。
ワクチン接種計画を見ると、進行中の医療従事者が約400万人、次いで重症化リスクが高いとされる65歳以上の高齢者約3600万人、高齢者以外の基礎疾患を持つ者約820万人、高齢者施設などの従事者約200万人、60~64歳の約750万人の順で接種が進められることになっている。
ここまででも約5770万人が対象であり、残りの16歳以上の全国民に行き届く行程は明らかになっていない。接種期間は来年2月末までだが、第2弾の高齢者でも4月以降の接種開始見通しとなっており、スケジュール通りに進行するのか不安がよぎる。
ワクチン接種の実施と並行して問題となってくるのが副反応の発生状況。23日現在で既に複数のケースが報告されているが、アナフィラキシーや死亡例はなく、いずれも軽微であるようだ。未知のワクチン接種に対する国民の安心感を醸成するためにも、正確で迅速な副反応情報の提供が求められる。
コロナ禍における問題は社会全般に及んでいる。雇用に関しては、業種によって深刻な経営状況に陥り、一部は廃業にまで追い込まれている。厚生労働省によると、19日現在の解雇等見込み労働者数は累計で8万8574人と集計されている。
医療現場においては新型コロナウイルス一色となっているが、病院内で頻発している薬剤耐性菌への対応も求められている。国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの森岡慎一郎氏が警鐘を鳴らすリポートを発表している。2019年に本格稼働した感染症対策連携共通プラットフォーム「J-SIPHE」(ジェイサイフ)の最新データを用いて、日本における薬剤耐性菌の現状を報告し、感染予防と抗菌薬の正しい使用を訴えている。
現在の日本においては、医療逼迫状態からの脱却、ワクチン開発・製造、迅速な接種などのコロナ関連対策はもちろん、通常の医療提供体制や介護体制の確保、失業対策、女性や子供で増加している自殺の防止対策など、解決すべき課題は枚挙にいとまがない。オールジャパンで取り組まないと、取り返しの付かない事態を招くことになる。