小林化工が製造販売する抗真菌剤「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤が混入した問題で、福井県は過去最長となる116日間の業務停止命令を出した。2人の死亡例を含む221人の健康被害が報告された問題の大きさを考えると極めて妥当な処分内容だ。
承認書とは異なる手順書に沿った製造や立入検査用の二重帳簿作成、品質試験結果のねつ造などを経営陣が把握し、長期間にわたって黙認していた。同社は当初、ヒューマンエラーが原因と説明していた。不正を生む企業体質が温存されていたことに問題の根深さがうががえる。
改正医薬品医療機器等法では、製造販売業者や製造業者に法令遵守体制を整備するよう義務づけ、経営陣の責任も明確になった。過去の製造不正事案を二度と起こさないために法律で明文化した意味は何だったのか。製薬業界が主張してきた医薬品の価値にも大きく関わってくるだろう。
とりわけ、数量割合80%に迫った後発品の使用促進策が後退するのは確実だ。国の政策的な後押しを受け、後発品メーカー全社が市場拡大による成長を享受してきた。裏を返せば、後発品メーカーのうち1社でも重大な品質問題が起こった場合には、後発品業界全体でその代償を負わなければならない一蓮托生の関係だったとも言える。そこが先発品メーカーとは異なる点である。
日本ジェネリック製薬協会は、会員会社の総括製造販売責任者を対象とした会議を開催し、承認書通りに医薬品が製造されているか自主的な確認を行うことや、承認書と製造実態の点検方法についても統一化したフォーマットを用いてチェックリストを作るなどの方針を公表した。
小林化工が全製品の製造・出荷を停止した余波は、医療現場での供給不安を引き起こし、今もなお代替品を調達しづらいという混乱を招いている。
医薬品の品質・安定供給問題は個々の企業が対応すべきこととはいえ、業界団体としてさらなる対応方針を示す必要がある。
企業の隠蔽を見つけられなかった国や都道府県の監査体制にも責任がある。厚生労働省は、医薬品製造所への無通告立入検査を徹底強化する方針を打ち出したが、不正事案をなくすことができるのだろうか。検査回数を増やすだけではなく、検査のあり方も見直していくべきだ。
近く、後発品80%達成後の新たな政策目標が示される。医療機関側からは、後発品から先発品に戻った事例が報告され、信頼できる後発品がなければ、先発品と原薬や添加剤、製法が同一のオーソライズドジェネリックを使わざるを得ない。
もはや、数値のみに焦点を当てた目標設定は現実的ではない。後発品メーカーが社会からの信頼を回復するために何をすべきか道筋を示し、初心に返って再出発を期すことが先決ではないか。