新型コロナウイルス感染症ワクチンの承認が近づいてきた。ファイザーとビオンテック製のワクチン接種が医療従事者から先行することになるが、既に焦点は全国の自治体での65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人、そして一般国民へと続く集団での接種に移っており、各市町村では急ピッチで準備が進められている。
先進的な取り組みとして示されているのが、診療所での個別接種と公共施設での集団接種を組み合わせた体制で短期間に接種を終える「練馬区モデル」だ。その他にも、全国の自治体では医師会などと連携した体制づくりが進んでいるが、その中で薬剤師はどのような役割が果たせるのだろうか。
厚生労働省から示された各自治体や接種を実施する医療機関向けの実施体制に関する手引きでは、具体的な医療従事者の配置について、薬剤師は予診・接種に関わる者として「薬液充填・接種補助を担当する」とされている。
一部の地域では、市町村や郡市区医師会から薬剤師会に協力要請が行われていると言われるが、まだ全体像は見えにくい。
2009年の新型インフルエンザは国内でほとんど被害がなかったが、今回の新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックは日本も例外ではなく、6000人以上の死者を出す中、ワクチンが開発され、接種するという初めての事態を迎えている。
実際には、まだ何をすればいいのか実感が湧かない人も多いかもしれないが、薬液充填や接種補助の役割にとどまらず、副反応のモニタリングなど、薬剤師ができることを積極的にアピールしていく必要がある。
全国民にワクチンを接種するという大事業である。優先接種対象となっている医療従事者の一員として、公衆衛生上の危機に対して国民にどう貢献できるのかが問われているとも言える。
英国では、薬局でワクチンの接種が行われているだけではなく、講習や訓練を受ければ医療従事者以外でもワクチンを接種できるようにし、国民への接種に対するスピード感を重視していると聞く。
もちろん、日本で薬剤師によるワクチンの接種は認められていないが、今回の事態を将来的なワクチン接種につなげる職能拡大のチャンスと捉えたい。
特に、自治体における一般国民への集団接種の場で薬剤師の仕事ぶりを知ってもらい、「日本でも薬局でワクチンを打ってほしい」という期待につなげられるかどうかにかかっている。
かつてない重要な機会を迎えている。最大のミッションである集団免疫の獲得に向けて進んでいこうとしている今こそ、薬剤師法第1条の「その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する」を噛みしめたい。