2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災は、わが国観測史上最大規模のマグニチュード9.0~9.1で、最大震度7を観測。巨大な津波が押し寄せ、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に甚大な被害をもたらした。震災による死者・行方不明者は1万8000人を超え、建築物の全壊・半壊は合わせて40万戸以上に及んだ。また、震災発生に伴い、福島第1原子力発電所の事故においてメルトダウンが起きた。
今年も3月11日を迎え、あの未曾有の大災害から10年という歳月が経過した。現在、被災地の多くでは嵩上げ工事が行われ、区画が整理されて建物が建ち並び、大きな道路が次々と開通するなど、壊滅状態だった街の復興は進み、その姿を大きく変化させている。10年という歳月をかけ、絶望的なまでのダメージを負った街を復活させられる力が、われわれ人間にはあるのだということを強く示してくれているように見える。
ただ、10年という歳月は決して短いものではなく、人の記憶を風化させてしまう期間でもあると言えよう。実際に、全国の8000人超が参加したウェザーニューズの調査によると、震災から10年が経過し、全体の8割以上が震災の記憶の風化を感じていることが明らかになった。
そもそも10歳未満の子供たちは、震災そのものを経験していない。今後、そうした世代は増えていくことになり、震災のことを次の世代にどのように伝えていくかも重要な課題になってくる。
一方、同社調査によると、震災の記憶の風化が懸念される中でも、非常食の備蓄に関する意識は向上傾向にあり、平均備蓄日数は震災前と比べて1日以上増加していることも判明した。
特に19年以降の伸びが大きいことから、同社は「相次ぐ災害や新型コロナウイルスの感染拡大により、備蓄への意識が加速したのではないか」と分析している。
先月13日深夜には、東北地方で最大震度6強を計測する大きな地震が発生した。災害とはいつ起きるのか分からないものだということを改めて認識した人も多いだろう。加えて、日本は台風など自然災害の多い国であるとの自覚が、備蓄意識の高まりにつながっていくのは望ましいことである。
これまでの備蓄や防災に対する意識を、震災発生から10年という機に見直すことも必要かもしれない。
震災から10年。復興が進む中、今なお避難者などの数は4万人を超えており、震災による影響は続いている。震災が発生した当時、多くの人が被災地や被災者に思いを馳せ、自分にできることを必死に探した。
10年が経った今、何ができるのか。それは、きちんと災害への備えをし、防災の意識を保ち続けること。そして、震災の記憶を風化させず、次の世代へ伝えていくことなのではないだろうか。