後発品メーカーの小林化工と日医工が製造不正で業務停止命令を受けたことが大きな波紋を呼んでいる。小林化工では、立入検査用の二重帳簿作成や品質試験結果のねつ造まで行われ、悪質な実態を経営陣が黙認してきたところに問題の根深さがある。
日医工でも、逸脱管理責任者が手順書に従って召集する「逸脱会議」と称される会議において、出荷試験不適合などの逸脱処理が実施されていることが長年明るみに出ず、企業体質の問題が浮き彫りになった。
ただ、記者会見で小林化工の小林広幸社長は、「後発品の需要増の結果、作業量が急増し、製品供給に支障を来さないよう法令やルールよりも作業効率を優先させていた」と明らかにし、日医工の田村友一社長も「業容拡大の中で現場に無理をさせすぎた。成長のスピードに品質管理体制が対応できていなかった」と述べるなど、不適切な製造の背景に後発品の急激な需要増があったことを認めた。
政府の後発品使用促進策の追い風を受けて、後発品メーカー各社は急成長を遂げた。しかし、今回の相次ぐ不祥事は、国策の負の側面を明らかにしたとも言える。加えて、最近は薬価改定が連続しており、特に2021年度の中間年薬価改定は後発品メーカーに大きな打撃を与えた。
国策による急速な後発品の需要増への対応、度重なる薬価改定によって消耗する後発品メーカーといった構図が浮かび上がる。
もちろん、今回の不祥事が後発品への信頼性に傷をつけた社会的なマイナス影響は甚大であり、これまで築いてきた後発品への信頼が崩れつつある危機的な状況にある。
ここに来て、厚生労働省から後発品メーカーの「業界再編を指導する必要がある」との声が聞こえてきた。民間企業の活動に国が介入することの是非はあるが、業界大手の日医工が不正を行っていたことを考えれば、再編で問題が解決するとは限らない。その前に、こうした製造不正が起こった背景をしっかり検証しなければならない。
最近、日本製薬団体連合会が薬価制度の全体設計を再考していくことを優先課題にすると明言した。一つの理由として、相次ぐ薬価改定によって医薬品の安定供給リスクが高まっていることを挙げている。
高品質で安価な後発品をどう国民に届けていくか、国は改めて薬価制度、薬事規制といった全ての側面から後発品の使用促進策を点検し直す必要がある。
製造不正に対しては、業界自らが信頼を回復していく責任があるが、数量増への対応を求める一方、薬価を下げ続けるという施策では、後発品メーカーの疲弊を招くだけだろう。
不正の背景にも目を配らせた改善策を講じることこそが、業界の健全な成長、ひいては国民の利益につながるはずである。