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【日本薬学会第141年会】<奨励賞受賞研究>細胞間相互作用制御に基づいた次世代型細胞治療法の開発

2021年03月19日 (金)

東京理科大学薬学部助教 草森 浩輔

草森浩輔氏

 細胞治療は、自身または他人から採取した細胞を患者に移植することによる疾患治療法であり、低分子医薬品やバイオ医薬品などを用いる治療と比較して、単回投与でも高い治療効果を得られることが示されている。

 しかし、生体内で組織を構成する細胞は細胞間における複雑な相互作用を介して高度な機能を発揮するのに対し、患者に移植される細胞は生体内の複雑な環境中での状態を反映していないことから、細胞が本来有する機能を最大限に発揮できない。従って、有効性の高い細胞治療法の実現には、患者に移植する細胞の細胞間相互作用の制御が必須と考えられる。

 私たちは、細胞自身が有する接着能を介して、細胞同士が接着することで形成される三次元細胞構造体(細胞スフェロイド)を用いることで、生体組織中の細胞に類似した細胞間の密な相互作用の再現を試みた。

図

 はじめに、インスリン産生細胞スフェロイドを作製したところ、マウスに移植したインスリン産生細胞スフェロイドの生存期間は懸濁状態での細胞投与と比較して顕著に延長し、糖尿病モデルマウスにおいて優れた血糖降下作用が得られた。

 次に、生体内で組織を構成する細胞が異なる種類の細胞と密接に相互作用していることに着目し、インスリン産生細胞と血管内皮細胞からなる混合スフェロイドを作製した。

 その結果、血管内皮細胞の混合によりインスリン産生細胞からのインスリン産生が増大し、その産生量は混合する細胞の比率に依存することが示された。この結果は、組織を精密に模倣した細胞スフェロイドを作製することで、さらに優れた細胞移植治療が実現できることを示唆するものである。

 以上、私たちは、細胞間相互作用を制御することで細胞の高度な機能を引き出し、細胞移植効率を大幅に改善できることを実証した。

 本研究成果をもとに、今後臨床応用が期待される次世代型細胞治療の実現に向けて一層研究に取り組みたい。



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