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【日本薬学会第141年会】<奨励賞受賞研究>ペプチド系複雑天然物の全合成を基盤とした機能解明・新機能分子創出

2021年03月19日 (金)

東京大学大学院薬学系研究科助教 伊藤 寛晃

伊藤寛晃氏

 アミノ酸が連なった化合物であるペプチドは、低分子化合物とは異なる特性を持ち、創薬分野において様々な応用例がある。ペプチド化合物のうち、天然資源由来であるペプチド系複雑天然物は、蛋白質には含まれない構造単位から構成される。これらのペプチド系複雑天然物は、強力かつ特異な生物活性を示すものや、優れた生体安定性を示す化合物も多いことから、医薬品シーズとして特に重要である。

 通常のペプチド化合物は様々な方法で調製可能だが、複雑な構成単位を含むペプチド系複雑天然物の一般的な合成法は存在しない。

 私たちは、有望な活性特性を示すペプチド系複雑天然物の固相全合成法の開発および天然物類縁体群の全合成と機能評価法の開発を基本戦略とし、未知の分子機能の解明を目的として研究を展開してきた。さらに、ペプチド系複雑天然物をモチーフとした新機能分子の創出を通じて、当該分子群の創薬応用への可能性を拡大することを目指した。

図

 これまでに、イオンチャネルを形成する巨大ペプチド系天然物ポリセオナミドB、顕著な抗癌活性を示すヤクアミドB、MRSAに有効なWAP-8294A2の固相全合成法を確立し、それらの作用機構を解明した。さらに、one-bead-one-compound(OBOC)戦略を環状抗菌ペプチド天然物ライソシンEの全合成へ応用し、2000種類超の類縁体群の構築と評価によって、天然物の持つ優れた抗菌活性よりもさらに強力な作用を示す人工類縁体を迅速に創出することにも成功した。

 合成的方法論を基軸にしてペプチド系複雑天然物の作用に関する新たな知見が得られたこと、有望な活性特性を示す人工類縁体を発見できたことは、当該天然物群が医薬品資源として優れた可能性を持つことを示している。

 本研究成果が、これら天然物群のさらなる応用展開へとつながることに期待し、これからも研究に邁進する所存である。



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