来年6月の改正薬事法完全施行に向けて、厚生労働省が9月に公表した「薬事法施行規則の一部を改正する省令案」で、「郵便その他の方法による医薬品販売等」、いわゆるインターネットによる医薬品販売規制についての是非が、関係諸団体を巻き込んで大きくクローズアップされている。
厚労省の省令案では、ネット販売が可能な医薬品の範囲は、販売時に情報提供規定のない第3類薬に限定されている。
これに対し、医薬品のネット販売規制を従前から問題視していたネット販売事業者らが反対意見を表明した。現行制度上、黙認されてきたかぜ薬や鎮痛剤などのネット通販が、改正薬事法の施行に伴い明確に禁止されることで、既存通販業者が少なからず経済的な影響を受けることを考えれば、反対表明自体はしかるべき行動に映る。
さらに、今月11日には、政府の規制改革会議も、規制に関わる部分を撤回した上で、新たなルール整備を早期に行うべきとの見解書を公表した。
この中で、薬事法上、ネット販売を規制する規定がないとする一方、「消費者の利便性阻害」「地方中小薬局のビジネスチャンスの制限」「ネット販売が店頭販売に比して安全性で劣ることの実証がされていない」等の見解を示した。
これに対し、17日には薬害被害者、消費者等の24団体が、舛添厚生労働大臣と甘利規制改革担当大臣に対し、「安全性確保が後退する」として,一般薬のインターネット販売の原則禁止を求める要望書を提出。ネット業者や規制改革会議の見解に、真っ向から反対する姿勢を打ち出した。改正省令案をめぐって、対立する意見が出される中で、年内にも省令を公布したい厚労省の対応が大きく注目される。
現行の薬事法では、医薬品販売に関して、店舗管理者の要件は薬剤師と明文化されていたものの、直接の医薬品販売には曖昧だったが、今回の改正薬事法により、明確に規定した。さらに対面販売の原則を盛り込むことで、医薬品と専門家(薬剤師または登録販売者)を一体化した。
そもそも改正薬事法の背景には、薬剤師による医薬品販売が原則だった中で、一部店頭で有名無実化している現状が散見されたことから、医薬品販売上のルールを明確化するという目的もあった。さらに言えば、現状の医薬品販売が店頭セルフ化の進行で、ネット上での購入と、さほど違いのないような状態を作り出してきたともいえる。
今後、仮に省令案が原案のまま公布され、医薬品ネット販売が規制されたとしても、既存の医薬品小売関係者は、それを手放しで歓迎することは決してできない。改正薬事法が専門家による医薬品の対面販売(情報提供)に重点が置かれていることを考えれば、それを疎かにすることは、さらなる規制緩和への道筋を開くことになるといっても過言ではない。
既存の医薬品小売関係者らは、ネット販売に関する一連の動きに対する諸問題を真摯に受け止め、自らがそうしたシビアな現状に立たされていることを自覚し、生活者からの信頼を得るためにも、適正な一般薬販売を今以上に心がける必要がある。