「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」が1年ぶりに開催された。今回の最大の注目点は、「流通改善は本当に進んだのか」であった。流通改善の主導的立場となった中間流通の卸におけるポイントは、▽6カ月超の長期未妥結▽総価取引(単品単価契約)▽一次売差マイナス――の3点で、これらの改善が図られたのかが主な焦点だ。
未妥結については、既報の通り,9月末現在(薬価改定後6カ月)の妥結状況は70・9%と、目標とされていた70%をぎりぎりクリアできた。
この数字をどのように評価するかが問題である。これまでの尋常ではない状況と相対的に比較すれば、はるかに改善したと言えるが、商品を売るのには価格が決定しているという常識の世界から見れば、半年経って3割も価格が決定していない未妥結状況という結果で、絶対的評価としては極めて低いと言わざるを得ない。
流改懇でも一定の評価をしながら,残り3割が長期未妥結に入ってしまったことから、今後の対応が重要なキーとの意見が続出した。
未妥結状態を続けて、最終的に価格が最も安くなったところで妥結しては、これまでの常識では通用しない特殊な商慣行と何ら変わりはない。
流改懇では、ルールを無視してずるをすれば必ず勝つ「後出しジャンケン」に例えられていたが、そんな子供の遊びでのかわいい表現ではないだろう。大人の世界で端的に言い表せば、「ごね得」である。ごね得がまかり通れば、流通改善は達成できなかったと判断され、中央社会保険医療協議会が大なたを振り下ろすことは、ほぼ確実視されている。
総価取引については、未妥結と同様、薬価制度・調査の信頼性を左右する重要な課題だ。今回の調査では、9月末までに妥結した200床以上の病院で単品単価契約だったのは68・2%、20店舗以上のチェーン調剤薬局で21・2%だった。前年はそれぞれ46・4%、0・9%であるので、それに比べれば一定の評価は得られよう。
また、総価契約の中でも、全品総価契約は同じく病院で5%(前年24・6%)、調剤薬局で2%(53・2%)と,ある程度の改善は見られている。これらの数字は上半期だけのもので、今後未妥結分の数字が上乗せされれば、どのように変化するのか、この点も大いに注目されるところだ。
一次売差マイナスの解消に関しては、通期でないと結果が出せないため、今回は報告が見送られた。主要卸の中間決算状況からは、芳しくない結果が想定される。
今回の流通改善への取り組みにおける新たな動きは、何と言っても国の対応の変化だろう。
これまでは、医療保険制度下とはいえ、民間同士の医薬品商取引に国家権力を行使することは極力避けてきた経緯があった。それが今回、従前では考えられないほど、川上から川下の全流域における医薬品流通関係者への積極的なヒアリングの実施をはじめ、医政局長・経済課長の通知発出など、人が変わったかのようなアクションを見せたことは、ある意味で最も大きな変化だったのではないだろうか。
官民総力による流通改善は、これからの後半戦で真の成果を見出せるのか、全てが水泡に帰すのか、性根を据えた行動が全てを決することになる。