2020年から45年までの薬剤師の需給推計に関する調査結果が厚生労働省から示され、「将来的な薬剤師数は余剰になる」と結論づけられた。調査では、需要については45年には33万2000人が必要になるとし、変動要因を考慮すると40万8000人まで増加すると算出した一方、供給は機械的に推計した場合、45年に45万8000人に増加。これに人口減少による薬学部入学者数の減少を考慮し、45年に43万2000人と弾き出した。
薬剤師数の需要は、対人業務の充実を前提としており、対物業務を効率化せず、従来の調剤業務が続いていくならば、さらに供給過剰になると警鐘が鳴らされている。
注目したいのは、厚労省検討会による薬剤師の需要に関する論点に、新型コロナウイルス感染症対応を含む感染症対応など、公衆衛生への対応も求められると明記されたことである。
大きな試金石となりそうなのが薬剤師によるワクチン接種の実現だ。4月には、関西の12府県市が参画する関西広域連合が政府への緊急提言で、ワクチン接種を行える人を多く確保するため、薬剤師や医学部の学生などが対応できるよう範囲を拡大する特例を認めるよう要望した。
さらに今月、亀田総合病院総合内科部長を務める医師の八重樫牧人氏らが薬剤師を接種の担い手に加えるよう求める署名を約2万4000筆分以上集め、17日に河野太郎ワクチン担当相に提出した。八重樫氏らは、筋肉注射のトレーニングを受けることを条件に、法改正か特例によって薬剤師の接種を認めるよう求めている。
これを受け、河野大臣は18日の記者会見で、ワクチンの「打ち手」確保が一番との認識を示し、歯科医に続く次の段階のグループとして「当然、薬剤師も検討対象になると思っている」の考えを表明。「打ち手不足が解消されるかを見ながら対応していきたい」と踏み込んだ。
まさに千載一遇の好機とも言え、日本薬剤師会も「なるべく早く対応できるよう考えていきたい」と慎重姿勢を転換し、筋注などの研修を行っていくようだ。ここは待ちの姿勢ではなく、薬剤師への期待が高まっている今こそ、積極的な対応をお願いしたい。
薬剤師によるワクチン接種は、既に海外で豊富なエビデンスがあり、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種でも、英国や米国で広く薬局で接種が行われている状況を目の当たりにした。
残念ながら、今回声を上げたのは薬剤師ではなく、行政や医師であった。八重樫氏は「医師から見て筋注は簡単で、信頼して任せられる」とまで発言している。
このムーブメントの続きをしっかり薬剤師が受け止め、まずはコロナ禍の緊急事態におけるワクチン接種で結果を出し、将来的には公衆衛生分野での薬剤師業務の需要を広げる方向につなげたい。