
米食品医薬品局(FDA)は5月26日、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療薬として、モノクローナル抗体薬ソトロビマブの緊急使用許可(EUA)を与えたことを発表した。
モノクローナル抗体は、ウイルスなどの有害な抗原を撃退する免疫システムと同様の働きを持つ、人工的に作られたタンパク質である。ソトロビマブは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質とだけ結合するモノクローナル抗体であり、新型コロナウイルスのヒト細胞への結合と侵入をブロックするようにデザインされている。
ソトロビマブは注射剤で、500mgを単回静脈内投与する。投与の対象は、65歳以上の高齢者や特定の基礎疾患などのためにCOVID-19による入院や死亡などのリスクが高い、体重40kg以上かつ12歳以上の小児および成人の軽症から中等症患者である。ただし、COVID-19により既に入院中の患者や酸素吸入を必要とする患者に対しては、投与が許可されていない。同薬の投与に伴う潜在的な副作用には、アナフィラキシー、急性輸液反応(薬剤投与後24時間以内に出現するアレルギー反応などの症状のこと)、発疹および下痢などがある。
ソトロビマブのEUAは、軽症から中等症のCOVID-19の成人非入院患者583人を対象とした、第1〜3相の二重盲検ランダム化比較試験の中間解析に基づいている。これらの患者のうち、291人にはソトロビマブが、残る292人にはプラセボが、COVID-19の症状発現後5日以内に投与された。主要評価項目は、29日目までのCOVID-19の進行(あらゆる疾患に関わる緊急治療のための24時間以上の入院、または全死亡と定義)であった。その結果、入院または死亡が生じた患者の割合は、ソトロビマブ投与群では3人(1%)だったのに対して、プラセボ投与群では21人(7%)であった(85%のリスク減少)。
重要なことに、実験室での試験では、ソトロビマブが、英国、南アフリカ、ブラジル、米カリフォルニア州、米ニューヨーク州、インドで最初に報告された変異株に対しても活性を保持することが示された。
FDA医薬品評価研究センター長のPatrizia Cavazzoni氏は、「このモノクローナル抗体薬のEUAにより、リスクの高いCOVID-19患者の入院回避に役立つ治療選択肢がまた一つ増えた。新型コロナウイルスと闘うための武器として、米国で流行している新型コロナウイルスの変異株に対しても活性保持が期待できるモノクローナル抗体薬が使えるようになることの意義は大きい」と述べている。
なお、ソトロビマブは英GlaxoSmithKline社と米Vir Biotechnology社の共同開発薬であり、緊急使用許可はGlaxoSmithKline社に対して与えられた。(HealthDay News 2021年5月27日)
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https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-additional-monoclonal-antibody-treatment-covid-19