後発品の供給不安に歯止めがかかっていない。小林化工や日医工の製造不正に続き、長生堂製薬や富士製薬、共和薬品なども相次いで自主回収を発表した。後発品の新目標として「2023年度末までに全都道府県で数量シェア80%以上」を掲げているが、国民の後発品に対する信頼は地に落ちた。
信頼回復に向けては長期戦は避けられない。3年間という短い期間で信頼回復を成し遂げ、数量目標を達成するのは難しいと悲観する声もある。早急に具体的な対応策を示すべきだ。
後発品の使用促進策は後戻りした。「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)の原案では「後発品にかかる新目標についての検証」という文言から始まっていたが、最終版では「後発品の品質及び安定供給の信頼性の確保」から言及する修正が行われた。骨太方針19にあった「インセンティブ強化を含めて引き続き使用促進に取り組む」という言葉も消え、後発品の厳しい現状を表している。
今直面している危機は、安定供給にどう対応するかである。薬局では必要な薬剤が届かないとの不満が噴出している。後発品の自主回収による連鎖で代替品を調達できなくなったためだ。
東京都薬剤師会が実施した調査では、「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」と回答した薬局は2割程度あり、そのうち半数強は10品目以上発注ができていないことが判明した。代替可能な後発品を調達しようとしても納品できず、先発品へと戻す薬局が相次ぎ、先発品の一部でも出荷調整に追い込まれている。経営的に後発品調剤体制加算に依存した薬局も多く、影響は広範囲に及んでいる。
後発品への不信感は患者にもある。医薬品変更で患者からの同意を得やすいのが、先発品と同じ原薬、添加剤、製法のオーソライズドジェネリック(AG)だ。品質や安定供給で不安がある後発品はAGに続々と切り替わっていくのではないかとの声も聞こえてくる。後発品の使用促進でAGが率先して使われる姿は違和感が拭えない。
国も都道府県でバラツキがあった業務停止日数の上限を180日に引き上げるなど監視体制を強化する方向に舵を切る。これまでの経緯を思えば規制強化は当然だ。
ただ、“量から質”への政策転換によって過剰な規制になり、きちんと法令を遵守し、品質や安定供給を守っている後発品メーカーの体力を弱めることはあってはならない。産業面にも目配りした実効性の高い政策を実行してほしい。
大事なのは、今回の教訓を生かして将来の方向性を決めていくことだ。世界的に見ても短い期間で数量割合を急激に押し上げた日本の後発品政策は果たして正しかったのか、その功罪はきちんと検証すべきだろう。