日本製薬工業協会 会長 庄田 隆
昨年は、サブプライム問題に端を発した金融不安による株価の下落や円高の昂進などにより、内外の経済情勢が急変した1年でありました。今後、金融不安が実体経済へ与える影響の拡大が懸念されるところですが、そのような経済情勢にあっても、新薬の継続的な開発と安定供給を通して、日本の国民、患者、そして世界の人々の健康に貢献することが製薬協に加盟する企業の変わらぬ使命であり、この認識を新たに今年も取り組んでまいります。
本年、製薬協が取り組むべき主要課題は、[1]新薬価制度の2010年度実現[2]研究開発基盤、臨床研究体制の一層の整備及び審査の促進[3]国際連携、国際協力のさらなる推進[4]製薬産業に対する理解の促進‐‐の4点です。特に新薬価制度の10年度実現と研究開発基盤、臨床研究体制の一層の整備及び審査の促進については、本年の取り組みがその課題達成に大きく影響を与える大切な年であると認識しています。
革新的医薬品を世に送り出すためには、積極的な研究開発費の投入が必要とされ、その額は年々増大しています。革新的医薬品の創成を継続的かつ迅速に行っていくためには、早期に研究開発投資を回収し、次なる新薬の研究開発に資源を投入できる仕組みが必要となりますし、日本で早く上市することがインセンティブとなる仕組みも重要です。そして何よりも、これらの仕組みは、日本の患者さんの新薬アクセスの向上にもつながるものであると考えています。そのような観点から、昨年われわれの業界は、薬価制度改革案を提案いたしました。今後、中医協の場で論点が整理され、議論されていくことになりますが、製薬協としても制度実現に向けた努力をしっかりと行ってまいります。
治験・臨床研究基盤の整備については、官民対話の場を活用した政策提言・施策のフォローや成果の評価を確実に行っていくことが重要と考えています。ドラッグラグを解消し、「革新的な新薬をより早く患者さんに届ける」という目標を達成するため、産官学それぞれが果たすべき役割を明確にした上で課題を共有し、一つひとつを十分に議論して成果に結びつけていかねばならないと考えています。
近年、医療技術は長足の進歩を遂げています。そのような中、医薬品産業には、「医療における役割」と「産業としての役割」の二つの使命が課されており、前者では、革新的新薬創出による病気の克服や医薬品の安定供給を通じた国民の健康増進への貢献、後者においては、省資源知識集約型産業として、日本経済発展の一翼を担うことが期待されています。二つの使命を果たしていくため、直面する課題達成に向け努力してまいります。弊協会に対する一層のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。