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問われる奨学寄付金のあり方

2021年08月20日 (金)

 小野薬品は、同社の社員が今年1月に贈賄の疑いで逮捕された事件で、外部弁護士によって構成される調査委員会の報告書を公表した。医師に自社製品の使用促進を依頼し、所属先に奨学寄付金を提供したことが犯罪に当たるとされた事件。今回の事件は、他社でも起こり得る可能性を秘めている。奨学寄付金制度というグレーな仕組みのあり方を、業界全体が改めて見直す時期に来ている。

 事件は、同社の社員2人が、三重大学病院臨床麻酔科教授に対して医療用医薬品オノアクトを積極的に使用するよう依頼し、第三者である三重大学に奨学寄付金200万円を提供したことが第三者供賄に当たるとして逮捕されたもの。2人は6月に津地方裁判所から有罪判決を受けた。

 報告書には同社が奨学寄付金の提供を決定するまでの経緯が詳細に記されている。

 事件の発端は、担当MRが医師から、オノアクトの処方拡大を見返りとした奨学寄付金提供の要請を受けたこと。MRは上司の指示のもと「三重大学を大量処方先へ変革させる二度とないチャンス」などと記したレポートを作成。本社の内諾を得たとして研究助成金申請書を提出し、それが承認されて奨学寄付金提供が決まった。

 その後、教授の指示や意向を受けた三重大准教授が、使用実績を増やすため電子カルテにオノアクト使用の虚偽の入力をしたことが分かり、これがきっかけとなって一連の行為が明るみに出た。

 調査委員会が社内をヒアリングして分かったことは、取引誘引のための奨学寄付金の提供が禁止されていることは一定程度周知されているものの、医師とMRの間でどのようなやり取りがあれば犯罪と認定されるのかという判断がつきかねる者が少なくないことだ。

 そもそも、医師個人ではなく第三者に奨学寄付金を提供した場合でも犯罪に問われる可能性があるとの認識が、小野薬品に限らず、業界全体で乏しかったと言えるのかもしれない。報告書は「本件はMRにとってはまさにグレーゾーンの中で起きた事件であると言っても過言ではない」と指摘している。

 公的な研究費が不足する中、製薬企業から提供される奨学寄付金は、医師らの研究を促進する重要な資金源となっている。有力な医師から要請されれば、奨学寄付金の提供を拒みにくいのが製薬企業の本音だろう。

 ディオバン事件を契機に奨学寄付金制度の見直しが進んだが、それでは不十分だったことが今回の事件で明らかになった。より一層の透明性の担保が求められている。

 製薬企業の営業活動と奨学寄付金提供が少しでも連動する限り、疑いの目を向けられる。一部の製薬企業が踏み切ったように奨学寄付金制度を廃止するのか、両者が連動する余地がない制度を設計するのか、望ましい仕組みを業界全体で再構築すべきだ。




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