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正しい睡眠目指した保健活動を

2009年1月16日 (金)

 夢見のめでたい順番を指す江戸時代からの言い習わしに、「一富士、二鷹、三茄子」がある。特に、初夢でこれらを見ると、大変縁起が良いとされている。一番目の富士山は日本最高峰の霊山、二番目の鷹は鳥の王者、三番目の茄子は、「徳川家康が自らが住んでいた駿河の国の名物を順番に論った」という説や、「茄子の初物の値の高さを現している」などの諸説があるようだ。

 初夢による夢占いもさることながら、近年、睡眠の質とメタボリックシンドロームの関連性を指摘する研究論文が相次いで報告されている。中でも、睡眠時間が不足すると食欲抑制物質のレプチンが減少し、食欲亢進物質のグレリンが増加して肥満を招くというメカニズムを示す研究発表は少なくない。

 スタンフォード大学の研究もその一つ。30060歳の1024人を対象とした臨床試験では、睡眠時間5時間の人は8時間の人に比べてグレリンが15%も増加し、レプチンは16%も減少したという。

 シカゴ大学メディカルセンターでは、若い健常男性を対象に睡眠時間を4時間に制限した調査結果を報告している。それによると、食事量は4時間以上寝ていた時に比べて24%も増加した。しかも食べ物の種類は、クッキーやキャンデー等のお菓子類、パスタ等の炭水化物など、肥満になりやすいものばかりを好んで摂取する傾向が見られたとしている。

 コロンビア大学の研究では、平均睡眠時間4時間以下の人は、平均7時間の人に比べて37%も肥満になる確率が高く、平均5時間または6時間の人も、平均7時間の人に比べると血中レプチン量が低いことが報告されている。

 睡眠不足による肥満のメカニズムについては、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌が促進され、糖代謝や蛋白代謝が亢進して、体内に脂肪が蓄えられやすくなるという学説もある。また、中高年層の場合は、「睡眠不足によって心拍数が高くなり、高血圧を発症しやすい」と言われている。

 最近、注目されている睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の分断によって睡眠不足に陥りやすい。だが、睡眠時無呼吸症候群の主要因は肥満にあるため、睡眠不足による肥満が、さらに睡眠時無呼吸症候群を悪化させるという悪循環を招く可能性も指摘されている。

 では、不眠による肥満を防止するためには、どのような手立てが考えられるのか。欧州では早くから、医療ベースで睡眠の質向上に取り組んでいると聞く。だが、メタボリックシンドロームを防止するには、医療ではなく、正しい睡眠の知識を啓発して、快適な睡眠を得るための生活習慣・環境を作ることが、何よりも重要ではないだろうか。それを実現するには、「睡眠衛生活動」を地域で普及させることが不可欠だ。

 大阪府では2006年度から、正しい睡眠の知識普及と実践を目的とした「ぐっすりくっきり快眠セミナー」を、全国に先駆けて地域保健所でスタートさせた。この事業では、統計的にも有意な効果が上がっているという。全国の自治体も、このような保健活動を取り入れることを、検討してはいかがか。正しい快適な睡眠が、健康づくりの第一歩になることを期待したい。




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