第54回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会副会長
森昌平
福岡県薬剤師会理事
窪田敏夫
2040年時点で65歳の人は、男性の約4割が90歳まで、女性の2割が100歳まで生きると推計され、「人生100年」が射程に入ってきている。一方、平均寿命と健康寿命は約10年開きがあり、この差が拡大すれば、日常生活に制限のある、不健康の期間が延長するだけでなく、医療や介護に関する費用の増大にもつながる。疾病予防と健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐと共に、社会保障負担の軽減も期待できる。
本分科会では、基調講演として、「健康寿命延伸における薬局・薬剤師の役割」と題して、日本薬剤師会の有澤賢二常務理事から、薬局が健康情報の拠点として、健康サポート機能の一層の充実、機能評価に努めていく必要性がある中、健康寿命延伸における薬局・薬剤師の役割について講演いただく。
次いで4人のシンポジストから健康寿命と密接な疾病についての知識、予防および支援方法について紹介いただく。九州栄養福祉大学リハビリテーション学部の橋元隆教授には、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)予防のための運動・体操、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量の低下)に対する運動や栄養の介入方法について紹介していただく。
高齢者のフレイルは、多剤併用も要因の一つとされており、原土井病院薬剤部の中道真理子科長には、リハ薬剤(リハビリテーション薬剤)の視点からフレイル高齢者に対する薬物療法支援についてお話いただく。
福岡市薬剤師会薬局七隈店の早田佳生副薬局長には、認知症早期発見のため保険薬局で物忘れチェックの実施に取り組み、認知症疑いを見い出し病院へ受診勧奨を行った症例等を講演いただく。
JCHO九州病院薬剤部の吉国健司副薬剤部長には、心臓リハビリテーションにおける薬学的管理の実際とポイント、入院患者が退院する際の地域連携について紹介いただく。最後の討論を含めて薬局・薬剤師による健康寿命延伸への寄与の一助となれば幸いである。
(窪田敏夫)