首相官邸のホームページで公開されている新型コロナワクチンの接種率(2回完了)は15日時点で52.1%と国民全体の過半数を超えている。2月から医療従事者を対象とした接種が開始され、4月には65歳以上や基礎疾患がある人などが対象となり、そして現在は10~30代など若年層の接種も進んでいる。
こうした中、最近では「ワクチン・検査パッケージ」という言葉が聞かれるようになった。これはワクチン接種やPCR検査等の結果をもとに個人が他者に2次感染させるリスクが低いことを示す仕組みとして、3日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策分科会で提案された。
行動制限の緩和などの措置として海外で導入されている「ワクチンパスポート」と呼ばない理由としては、保持しない人が社会活動に参加できないことを想起させ、社会の分断につながる懸念があるためとしている。
「ワクチン接種が進む中で、日常生活はどのように変わり得るのか」というタイトルの資料には、必要な感染対策を講じながら、可能な限り制約のない日常生活に徐々に戻していくためには、「ワクチン・検査パッケージ」を活用することが重要になると指摘している。
「ワクチン・検査パッケージ」の感染によるインパクトが大きい場面の具体的な適用では、▽医療機関や高齢者施設、障害者施設への入院・入所や入院患者・施設利用者との面会▽医療・介護・福祉関係等の職場への出勤▽県境を越える出張や旅行▽全国から人が集まるような大規模イベント▽感染拡大時に自粛してきた大学での対面授業▽部活動における感染リスクの高い活動――などが例示されている。
ただ、これら場面で活用される「ワクチン・検査パッケージ」も、医療のひっ迫が生じ、緊急事態措置が課せられた場合は活動が制約され、パッケージ自体が活用されない状況になることもあり得るとの考えも示されている。
「ワクチン・検査パッケージ」は、現時点では分科会からの提案として示されたものに過ぎないが、今後、ワクチン接種が進んだ日常生活についての国民的な議論のたたき台として活用されていくのかもしれない。
一方で、気になる点もある。この提案の大前提として記載されていたのが、「検査の陰性やワクチン接種歴は他者に2次感染をさせないことや自らが感染しないことの完全な保証とならない」という文言である。
さらに「わが国において全ての希望者がワクチン接種を終えたとしても,社会全体が守られるという意味での集団免疫の獲得は困難と考えられる」と、ワクチンの効果の限界についても言及している。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、われわれの日常生活、健康面においてもかなり大きな影を落としている。やはり、刻一刻と変化する状況の中で、正確な情報をもとにした議論が必要になってくるだろう。「ワクチン・検査パッケージ」の動向に注目していきたい。