新型コロナウイルスの感染拡大から、1年半以上の時が経過した。そうした中、全国各地で新型コロナワクチン接種は進み、高齢者だけでなく、中年層や若年層にも2回接種を終えた人が広がりつつある。一方、緊急事態宣言の発令は4度を数え、自粛生活やリモートワークなど、日々の暮らしや仕事等への影響は長期化している。感染拡大の収束の兆しは未だに見えないまま、先行きが不透明な不安な日々が続く。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、様々な方面へと波及している。例えば、インテージヘルスケアの調査によると、「かぜ」の経験率において、新型コロナウイルス感染拡大の影響がなかった2019年の経験率を100とした場合、21年の経験率は36.0%と大幅に減少。「せき・たん」「喉の痛み」「悪寒・発熱」「鼻づまり・鼻水」といった関連症状も軒並み下がっていた。
「かぜ」の経験率の低下は、新型コロナウイルス感染症の予防対策としてマスクの着用や手洗い、手指の消毒、うがいなどの習慣が定着したことが大きな要因として考えられる。このように新型コロナウイルス感染症の拡大によって感染症の予防対策が習慣化したことなどから、「かぜ関連薬市場」に関しては、将来的に増加傾向に転じることは考えにくいと指摘されている。同市場は引き続き厳しい状況になるとの見込みだ。
影響は日常生活にも及んでいる。例えば「睡眠」について見ると、ニチバンが行った調査では、コロナ禍の平均睡眠時間は6.5時間で、コロナ前後の自身の睡眠の質について28.8%が「下がった」と回答。30.4%が「眠りが浅くなった」と答えた。コロナ禍で増えた睡眠の悩みとしては、「熟睡できない」「夜、寝つけない」などが多く、その原因では「ストレスや不安」「運動不足」「生活のリズムの乱れ」などが上位に挙がった。
一方、コロナ禍の巣ごもり消費を追い風に、ドラッグストア業界の売上高は成長し、8兆円を超えてきた。ただ、これも個別の企業で見ると明暗が分かれた格好だ。
インバウンド需要の消失などで需要が減少した化粧品を中心に販売する店舗等が多い企業は苦戦し、郊外型などの店舗が多い企業はマスクなどの衛生用品に加え、巣ごもり消費に対応した食品の売上も大きく伸ばしている。
様々な影響を及ぼしている新型コロナウイルスとの戦いのゴールは未だに見えていないのが現状だ。何をもってゴールとするのかもよく理解できていない人が多いのではないだろうか。切り札とも言われたワクチン接種に関して、希望者への2回接種が全て完了した時、この長い戦いの様相に何か変化は現れるのだろうか。そこでは、皆が待望する新型コロナウイルス感染拡大の収束の兆しや長期化する戦いのゴールの姿が、少しでも明確になっていてほしいと思う。