日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が今春に発表した2020年度版実態調査の結果によると、ドラッグストアの総売上高は初めて8兆円を突破し、8兆0363億円に達した。ここ数年は5%前後の伸び率を維持し続けており、業界が目標に掲げる10兆円の目標到達は目前である。さらにその先も見据えた“2040年20兆円市場”の構築といった目標も示しているが、その実現へ向けても着実に進んでいるように思う。
そう思わせる要因の一つとして、各方面へ多大なる影響を与えたコロナ禍において、ドラッグストアが非常に高い支持を獲得していることが挙げられるだろう。各種調査やアンケートの結果などからも、生活者の高い支持は明らかであり、医薬品や衛生用品、食品など生活必需品の安定供給に努めてきた姿を地域の生活者等も目の当たりにしており、それが確かな信頼感へとつながっている。
また、個別企業においても売上高が1兆円に到達するドラッグストア企業の誕生が間近に迫っている。このほど発表された最大手ウエルシアホールディングス(HD)の22年2月期中間決算では、売上高が約5083億円に到達。調剤部門が好調で、前年特需の反動が大きかった物販をカバーし、前年同期比6.6%増という伸びを示した。そして22年2月期通期については、売上高1兆0210億円(前期比7.5%増)を見込んでいる。
売上高が1兆円を超えるような企業が今後も複数誕生すると、その数社でドラッグストアの売上シェアの3、4割を占める時代も現実味を帯びてくる。ウエルシアHD会長でJACDS会長も務める池野隆光氏は、「今後、わが国は人口が減るということは事実であり、人口が減るとマーケットはシュリンクする。当然、今後も寡占化の流れは一定にあるだろう」と予測している。
10月1日には旧マツモトキヨシHDと旧ココカラファインが経営統合し、「マツキヨココカラ&カンパニー」が誕生した。公表した22年3月期から24年3月期までの中期経営計画では、グループの経営目標として、26年3月期にグループ売上高1.5兆円、営業利益率7.0%を目指す方針を打ち出しているが、同社の今後の取り組みや動向には、既に高い関心が示されている。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、新たな生活様式の導入や働き方の変化など、社会は大きく変わってきている。また、寡占化の進行などドラッグストア業界を取り巻く環境も、変化していくことが予想される。
そうした変化の真っ只中にあっても、ドラッグストアの各社・各店舗には、生活者との間で紡いできた信頼関係をさらに揺るぎないものとし、今後も地域にとって不可欠で、頼れるインフラであり続けてほしい。