今月から緊急事態宣言が解除され、国内での感染者数も激減し、一見、コロナ禍が収束に向かっているような感すらあるが、薬局業界にとってはもう一つ収束の見通しが立たない問題が発生している。相次ぐ後発品メーカーの不祥事に端を発する医薬品の供給不安だ。
先日、本紙既報の通り今年6月の東京都や千葉県に続き、大阪府薬剤師会が9月に実施した「後発品に関する流通及び対応状況に関する調査」を公表し、希望した後発品が発注通りに納品されているケースが1%にも満たないことが分かった。
大阪府薬幹部からは薬局薬剤師が後発品の供給不足の調整に多くの時間を費やし、患者と十分に向き合えない現状が吐露された。
調査の中で、特に自由筆記では薬局側が医薬品調達に苦心している状況や、不祥事を起こしたメーカーに対する不信感など露骨な記述もされた。中には、かかりつけ薬局として患者からの信頼を得ていたが、医薬品在庫がないことで、在庫を持つ病院門前の薬局に患者を紹介せざるを得ないなど、医薬分業の根幹に関わるケースもあった。
会見した府薬幹部の1人は、薬局で採用している後発品はインタビューフォームや溶出試験を踏まえ、薬剤師が自信を持って選択し調剤していることを強調。今回の混乱で「選択の基準から外したものを選ばざるを得ないところが一番不愉快」と薬剤師職能の権利が侵されている点にも言及。
後発品の供給不安について、現状は、薬局薬剤師のそうした医薬品供給に対する見えない取り組みで大きな問題に至ってないのかもしれない。乾英夫大阪府薬会長はこの現状を「災害に値する」として「多方面にわたり、この状況を理解してもらいたい」と窮状を訴えた。
一方、ある医薬品卸の幹部は「MSの仕事の半分以上が出荷調整品の代替品の対応。現場では怒られっぱなしで極めて迷惑。損害賠償したいほど」と憤る。今後、卸として取り扱う後発品メーカーに対する品質、情報、安定供給などの監査も視野に入れているという。
この一連の後発品メーカーの不祥事は、製造現場と経営者側の認識の齟齬が大きな問題としてクローズアップされている。医薬品製造販売業者における三役が適切な業務を遂行できるよう経営トップが現場の状況を緊張感をもって把握していく体制整備が必要になる。
いずれにしても不祥事を起こしたメーカーに対して行政処分などのペナルティを与え、より厳しい体制を求めることは行政としては必要な措置ではある。ただ、今月1日時点で1749品目の後発品が供給調整されている。薬局などの現場で、今以上の混乱を来すことがないよう、事態の収束の見通しについても、国などが明確な説明を行うべき時期に来ている。