2022年が幕を開けた。新型コロナウイルスに翻弄された昨年に続き、今年も変異株のオミクロン株が欧米で猛威を振るう中で新年を迎えた。日本でも市中感染が広がりを見せている中、オミクロン株がインフルエンザのような季節性の感染症に移行する段階との見方がある一方、早期収束への楽観論に警鐘を鳴らす専門家もいる。いずれにしても、新型コロナウイルスに左右される1年となることは間違いないだろう。
22年の干支は「壬寅(みずのえ・とら)」であり、厳しい冬を越えて芽吹き始め、新しい成長の礎となるイメージがあると言われている。主要企業のアンケート調査では、8割以上で緩やかに景気が回復するとの感触が示されていたが、労働者の賃金が上昇していない現状に加えて物価高が押し寄せる中では、不透明な情勢である。
一方、薬業界においては、「壬寅」のイメージを大きく前進させたいところだ。最優先課題である新型コロナ対策では、昨年はデルタ株の拡大下でワクチンが海外頼みだったために接種が遅れてしまったが、今年は国内製薬企業のワクチンと経口薬の確保がようやく視野に入ってくる。オミクロン株に対する検討も同時並行で進められており、次のパンデミック発生時の対応も相当変わってくる可能性がある。
製薬企業では、医療用医薬品の供給不安への対応が最大の課題となるだろう。国の実態調査やそれを受けた対応など、当面すべき解決策は打たれた。あとはきめ細かな取り組みによって正常化を進め、医薬品に対する信頼回復を着実に進めていくしかない。
また大学では、薬学教育6年制にとって大きな転換期を迎える1年となりそうだ。昨年12月に文部科学省の小委員会が公表した中間取りまとめでは、入学定員の「抑制」との文言は明記しなかったが、適切な入学定員規模・入試倍率の維持策を大学と国で考えるべきとしたほか、薬剤師以外に適性が見込まれる学生に対する進路変更指導を促す提案など、踏み込んだ内容が目立った。
昨年には定員削減によって方向転換する大学も出始めた。薬科大学、薬学部でもいよいよ生き残りをかけた動きが昨年以上に注目されることになる。
薬剤師にとっては、昨年末の予算編成過程において急転直下で決まったリフィル処方箋への対応が焦点となる。これまで厚生労働省は、分割調剤の取り組みを改良しながらきっかけを探ってきたもののなかなか進展しなかったのが現状。唐突な印象は否めず、現場でも困惑の声が聞かれるが、制度導入が決まった以上はリフィル処方箋の導入をうまく薬剤師業務の追い風につなげたいところだ。
寅年の株式相場には「千里を走る」という格言がある。まさに薬業界にとって、千里を走るような勢いのある1年となることを期待したい。