米食品医薬品局(FDA)は12月20日、重症喘息の症状を緩和する新たな治療法として、注射薬のTezspire(一般名tezepelumab-ekko)を承認したことを発表した。同薬剤は、現行の薬物治療で症状をコントロールできない重症喘息を改善するための追加治療に使われる。そのため、同薬剤を処方された患者は、他の喘息治療も継続することになる。投与の対象は成人および12歳以上の小児で、4週間ごとに医療従事者が皮下注射で投与する。
Tezspireは、気道炎症に関与する分子である胸腺間質リンホポエチンのみを標的とする、初めての喘息治療薬である。同薬剤は、特定のタイプの重症喘息に限定されないという点で類のないものでもある。米レノックス・ヒル病院の肺疾患専門医であるLen Horovitz氏は、「好酸球が介在する喘息に対するモノクローナル抗体治療法はいくつかあるが、Tezspireはそれとは別の分子を攻撃し、異なる経路で作用する。それゆえ、幅広い喘息患者に有効であると考えられる」と説明している。
FDAは、2件の臨床試験でTezspireの安全性と有効性が示されたことを受け、同薬剤を承認した。試験では、重症の喘息患者にTezspire(1回210mg)またはプラセボのいずれかを4週ごとに52週間にわたって投与した。その結果、Tezspire群はプラセボ群に比べて、喘息発作の回数が有意に少なく、救急の受診や入院を必要とする発作も少なかった。
FDAによると、Tezspireの投与を開始しても、患者はコルチコステロイドの吸入や全身投与による喘息治療を急に中止するべきではなく、また、減薬する場合は、医療従事者による直接の指導の下、徐々に行う必要がある。このほか、既存の蠕虫感染症(寄生虫性疾患)がある場合は、Tezspireの投与開始前に治療する必要があること、同薬の投与開始後は、MMR(麻しん・風しん・ムンプス混合)、天然痘、ロタウイルスなどの生ワクチンの接種は避けること、同薬剤を短期間の喘息症状や発作の治療には使用すべきでないことなども述べられている。
米国では喘息患者の約5~10%が重症とされる。喘息は肺の気道を侵す炎症性疾患で、アレルゲンや刺激物、ウイルス感染などの特定の誘発因子によって気道の腫れや炎症が起こる。呼吸が困難になる喘息発作を引き起こすことがあり、その場合には、喘鳴、咳、胸部圧迫感などの症状が現れる。喘息発作は激しく長時間続くこともある。また、重症喘息の症状は一般に、短期的な治療では改善が難しい。(HealthDay News 2021年12月23日)
(参考情報)
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https://www.fda.gov/drugs/news-events-human-drugs/fda-approves-maintenance-treatment-severe-asthma