米FDAが免疫不全患者に対する抗体併用療法を緊急使用許可

2021年12月22日 (水)

この記事は2021年12月22日に配信された記事です。
配信日から2年以上経過している為、最新情報ではない可能性があります。

Photo Credit: アストラゼネカ

 米食品医薬品局(FDA)は12月8日、免疫機能の低下した患者や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種できない患者を対象に、英アストラゼネカ社が開発したEvusheldの緊急使用を許可したことを発表した。Evusheldはチキサゲビマブとシルガビマブの同梱製剤で、COVID-19の曝露前予防を適応としている。FDA医薬品評価研究センターのPatrizia Cavazzoni氏は、「今回の措置は、このような患者のCOVID-19発症リスクを低減する目的で、2種類のモノクローナル抗体の併用を認めるものである」と述べている。

 Evusheldの投与対象は、現在、新型コロナウイルスに感染しておらず、かつ直近で新型コロナウイルス感染者に接触していない成人および12歳以上で体重40kg以上の小児である。投与対象はその他にも、1)疾患や治療が原因で中等度から重度の免疫不全が認められ、COVID-19ワクチン接種により十分な免疫応答が得られない可能性がある、2)COVID-19ワクチン接種またはワクチンに含まれる成分に対して重篤な有害事象が生じたことがあるため、ワクチン接種が推奨されない、のいずれかの条件を満たす必要がある。

 チキサゲビマブとシルガビマブはともに長時間作用型抗体で、それぞれが新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に特異的に結合して、ウイルスのヒト細胞への侵入を阻止する。2種類の抗体は、個々に連続して筋肉注射で投与される。59歳以上の免疫不全患者または新型コロナウイルス感染ハイリスク者を対象とした第3相PROVENT試験では、プラセボ群に比べてEvusheld群ではCOVID-19の発症リスクが77%低く、このようなリスク低減効果が6カ月間持続したことが示されている。

 Evusheldの副作用として起こり得るのは、過敏性反応(アナフィラキシーを含む)、注射部位の出血、頭痛、疲労感および咳などである。PROVENT試験では、心筋梗塞や心不全などの重篤な心臓障害がプラセボ群に比べてEvusheld群で多く生じたが、因果関係は明らかにされていないという。FDAは、COVID-19の予防法としてEvusheldが自分に適しているかどうかは、医療従事者に相談の上で判断する必要があると助言している。

 がん患者、臓器移植患者、免疫抑制薬の使用患者などにはEvusheldが有益であると考えられ、米国人の2~3%がこの区分に該当すると推定されている。米ミネソタ大学のDavid Boulware氏は、「このような人は重症化や死亡のリスクが極めて高いため、今も外出ができない状況に置かれている。この治療によって多くの人が日常生活を取り戻すことができるだろう」とAP通信に対して語っている。

 FDAはこれまで、米リジェネロン社、米イーライリリー社、英グラクソスミスクライン社のCOVID-19に対する3種類の抗体療法を承認している。いずれも主に重症化リスクが高い感染者の治療薬として静脈内投与されるが、Evusheldは特にウイルスに感染しやすい患者の長期的な予防法として用いられる見込みであるという。(HealthDay News 2021年12月9日)

Source
https://consumer.healthday.com/b-12-9-fda-approves-drug-to-help-immuno-compromised-fend-off-covid-2655953717.html

(参考情報)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04625725

More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-new-long-acting-monoclonal-antibodies-pre-exposure


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