米食品医薬品局(FDA)は11月23日、移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染またはCMV感染症に対して既存の抗ウイルス薬が奏効しなかった成人患者と小児患者に対する治療薬として、Livtencity(一般名maribavir)を承認したことを発表した。
ヘルペスウイルスの一種であるCMVはヒトに感染することの多い2本鎖DNAウイルスである。臓器移植や造血幹細胞移植を受けて免疫抑制状態に置かれている患者では、CMV感染がさまざまな病態を引き起こし、移植臓器の喪失や、場合によっては死をもたらす。
LivtencityはCMVの特定のタンパク質(CMV UL97プロテインキナーゼ)を標的とすることでウイルスのDNA複製を阻止する抗ウイルス薬である。同薬の適応は、CMV感染症に対する既存の抗ウイルス療法に難治性・抵抗性を示す(薬剤耐性を引き起こす遺伝子変異の有無にかかわらず)、体重35kg以上で年齢が12歳以上の移植後患者である。
Livtencityの安全性と有効性は、第3相SOLSTICE試験で評価された。この臨床試験では、352人の移植患者を、8週間にわたってLivtencityを投与する群(235人)と治験者が割り当てた既存の抗ウイルス薬(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビル)のいずれかまたは2剤併用を投与する群(117人)にランダムに割り付けた。有効性の主要評価項目は、投与から8週間後のCMVのDNA濃度が定量検出限界以下であることとした。その結果、主要評価項目を達成した患者の割合は、Livtencity投与群で56%であったのに対し、治験者が割り当てた治療を受けた患者では24%にとどまっていた。
治験中に最も頻繁に報告されたLivtencityの副作用は、味覚障害、悪心、下痢、嘔吐、および倦怠感である。FDAは、Livtencityのガンシクロビルやバルガンシクロビルとの併用は、Livtencityがこれらの薬剤の抗ウイルス活性を低下させる可能性があるため、推奨しないとしている。また、薬剤耐性によるウイルス学的失敗が生じる可能性があるため、Livtencityによる治療中と治療後には患者のCMVのDNA濃度のモニタリングを行い、治療に反応しない場合やCMVの再活性化が認められる場合には、Livtencityに対する耐性を確認する必要があると述べている。
なお、Livtencityの承認は、武田薬品工業株式会社に対して与えられた。(HealthDay News 2021年11月29日)
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https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-treatment-common-type-post-transplant-infection-resistant-other-drugs