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米食品医薬品局(FDA)は2月11日、オミクロン株に有効な新しいモノクローナル抗体治療薬のベブテロビマブに緊急使用許可(EUA)を与えたことを発表した。同薬は米イーライリリー社が製造している。オミクロン株の変異により、これまで使用されていた一部のモノクローナル抗体治療の効果が見込めなくなり、医師に残された選択肢がほとんどない状況下での今回の決定は、COVID-19の重症化リスクが高い患者にとって朗報といえる。
EUAの対象は、軽症から中等症のCOVID-19に罹患した成人、および12歳以上で体重が40kg以上の小児のうち、重症化リスクの高い患者。また、FDAが既に承認している別の治療法を利用できないか、適応外の患者も対象になる。入院中、あるいは酸素療法を必要とするCOVID-19患者への同薬剤の投与は認められていない。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)のPatrizia Cavazzoni氏は、「現状では、治療薬の供給拡大がますます必要とされている。そのような中、今回の措置により、オミクロン株に対して中和活性を示すモノクローナル抗体薬が使えるようになった。ウイルスの新たな変異株が出現し続ける中、患者を治療するためのより多くのツールが必要とされている。今回のEUAは、そのニーズを満たす重要な一歩だ」と述べている。
ベブテロビマブは、重症化リスクの高い患者の治療薬としてこれまでに許可されている他のモノクローナル抗体薬と同様に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合することにより効果を発揮する。今回の決定は、700人以上のCOVID-19患者を対象とした一連の臨床試験の結果に基づいている。重症化リスクが低い患者を対象にした試験では、ベブテロビマブ単剤または他のモノクローナル抗体薬との併用で投与した群の方がプラセボ投与群よりも回復までの時間が短く、治療後5日時点での体内のウイルス量も少なかった。また、重症化リスクの高い患者を対象にした試験では、ベブテロビマブ単剤または他のモノクローナル抗体薬との併用で投与した群の入院率および死亡率は、全体として、別のモノクローナル抗体薬に関する臨床試験でのプラセボ投与群よりも低かった。
ベブテロビマブにより生じ得る主な副作用は、掻痒、発疹、輸注反応、嘔気、嘔吐などである。
イーライリリー社の最高科学・医学責任者であり、Lilly Research Laboratoriesの代表であるDaniel Skovronsky氏は、「当社はこのパンデミックとの闘いに尽力している。オミクロン株が確認される以前の2021年初めから、既に当社の科学者は高度に変異した株にも使用できる広域中和抗体薬としてベブテロビマブの開発に取り組んでいた」と述べている。(HealthDay News 2022年2月11日)
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https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-new-monoclonal-antibody-treatment-covid-19-retains