会見する評価機構幹部
日本医療機能評価機構は、4月1日から全ての薬局を対象に「ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を開始する。機構の野本亀久雄理事は「全国5万軒の薬局のうち、1万軒が参加をしてくれれば正確なデータが取れる」と述べ、多くの薬局の自主的な参加を期待した。機構では「ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」のWebサイトを開設しており、参加登録を呼びかけている。
機構によるヒヤリ・ハット事例の収集・分析事業はこれまで、医療機関が対象なっていた。しかし、06年の医療法改正で、薬局が医療提供施設と位置づけられ、医療安全確保体制の整備が義務化されたことや、事例報告の多くを医薬品関連が占め、分業率が60%近くに達している現状から、薬局での「ヒヤリ・ハット事例」の情報収集・分析の重要性が高まっていた。
日本薬剤師会でも、07年度の厚生労働省補助金事業として「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業導入検討」を実施。昨年、その報告書を取りまとめ、[1]薬剤関係のヒヤリ・ハット事例の発生率が高い[2]外来患者の半数以上が薬局で調剤を受けている[3]薬局における調剤等業務の特殊性――など、薬局でのヒヤリ・ハット事例の収集・分析事業の必要性を指摘していた。
それらの現状を踏まえて、「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」が本格的にスターすることになった。報告された事例を収集・分析し、広く薬局に提供することで、より一層の医療安全対策を推進することを目指している。
これまでの医療機関を対象とした事業では、参加機関の半数となる約300機関が報告義務だが、残る約300機関は自主的な参加で、報告数は伸び悩んでいた。今回、薬局を対象とした収集・分析は、全ての薬局が対象。ただ、自主参加方式のため、全国に約5万件ある薬局のうち、どの程度の協力が得られるかは未知数。野本理事は「1万軒が参加してくれれば正確なデータが取れる。これが5000軒だと厳しい」と述べ、実際的な統計処理上の点からも、より多くの薬局の参加を訴えた。
薬局に報告を求める事項は大きく、[1]当該事例が発生した日時[2]当該事例に係る患者に関する情報[3]当該事例に係る医療関係者等に関する情報[4]当該事例の内容に関する情報[5]その他、当該事例に関して必要な情報‐‐の5項目。
また、収集するヒヤリ・ハット事例の範囲は、▽医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例▽誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例▽誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例””で、日薬などの関係団体等と協力の基に作成された。
収集した情報は分析、検討を加えて公表する予定だが、当面は同事業の普及・啓発の意味も含め、機構のホームページ上に1カ月おきに公表、情報を更新していく。さらに半年に1回データを集計、年報もまとめる予定にしている。