日本薬局協励会は、70年を超える長い歴史を積み重ねてきた。「自己完成」「与える精神」「報恩感謝の心」という三つを協励精神として大切にし、「最大よりも最良の薬局たらん」を基本理念に掲げている。コロナ禍にあって、人や物の流れ、対人のあり方が大きく変化しても、協励薬局は地域での健康づくりになくてはならない存在として、地域住民の健康寿命延伸に寄与するため、各種の取り組みを進めてきた。
今期は基本目標として、国民の健康づくりへの貢献、協励精神の高揚、協励薬局の繁栄、会員の増加および育成、事業部門の強化を据え、年間テーマは協励精神に基づいて、「『不易流行』―報恩感謝の心を持って」としている。不易流行には、「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと」といった意味がある。
この不易流行を大会テーマに掲げ、6月18、19の両日にオンライン配信の形で開催されたのが、協励会の第73回東京全国大会である。これまで全国大会は1年に1回開催されてきたが、コロナ禍の影響で一昨年は中止に追い込まれ、昨年はオンライン開催となった。今大会も昨年に引き続き、オンライン配信での開催となった。参加者の安全を第一に考えた結果だと思うが、3年続けて一堂に会すことができない事態は苦渋の決断だったように思う。
オンライン配信となった今全国大会だが、その内容は充実していた。総会をはじめ、協励式ケースレポート、混合協励会、各種セミナーや特別講演など、注目のプログラムが並んだ。特に混合協励会は、「会員同士がお互いに教え、教えられる」という協励会が古くから大切にしているものを実践する場であり、コロナ禍であるからこそ、コミュニケーションの重要性を再認識することにもつながっていると言えよう。
また、今大会の大きなトピックスとしては、これまで6年間会長を務めた小田美良氏が退任し、新たな会長として佐野智氏が選出されたことが挙げられるだろう。
小田氏のもとで副会長を務めた佐野氏は「協励会は基本目標をしっかりと据えながら動いており、私が会長になっても大きく変わるところはない」との考えを示し、小田氏をはじめとする先代の会長たちから多くを学んできたことも強調している。
協励会には70年を超える長い歴史を積み重ねる中で、先人たちから受け継いだ熱い想いや地域に貢献するノウハウがある。一方で現在、コロナ禍によって大きく変化した新しい時代に入っており、それに対応していくことが協励会にも求められていくのではないか。
いつまでも変わらないことである「不易」、時代に応じて変化することである「流行」。そのような舵取りを佐野新会長には期待したい。