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薬剤師の地域偏在解消に道筋は

2022年07月08日 (金)

 病院薬剤師の地域偏在の解消が依然として課題になっている。特に地方の中小病院が薬剤師の確保に苦労しているようだ。地方には、高齢の薬剤師が1人しかおらず、退職後には薬剤師不在になりかねない病院もあると聞く。

 こうした中、日本病院薬剤師会の新会長に就任した武田泰生氏(鹿児島大学病院薬剤部長)は、中小病院の薬剤師確保に向けて特別委員会を立ち上げ、具体策を検討する考えを明らかにした。

 地域の公的病院が自治体と協働して必要な施設に薬剤師を派遣する仕組みの構築などを視野に入れている。以前から武田会長が提唱していた持論で、比較的各地で実施しやすい現実的な対策だ。

 派遣された薬剤師が地域医療の現状を肌で実感することで、視野の拡大や資質向上につながるような制度を設計できれば、そのコースを希望する薬剤師が増えるだろう。

 一方、薬剤師を確保して、チーム医療に時間を費やせる病院薬剤部は、見合った成果が出ていることを示す必要がある。病院薬剤師を確保できない一因として給料等の待遇の低さがある。薬剤師の確保により医療の質が高まることが分かれば、薬剤師の待遇を高め確保しようと考える病院が増えるかもしれない。

 最近の関連学会で、抗菌薬適正使用支援チームに専任薬剤師を配置した病院の成果が示された。専任薬剤師と兼任薬剤師が連携し、抗菌薬開始時の使用目的や投与量、培養採取有無のチェック、投与後の効果判定などの業務を拡充した。

 その結果、薬剤師から医師への適正な抗菌薬の変更提案や、不要な抗菌薬の中止提案が増加。広域抗菌薬の使用量は低下し、メロペネムやレボフロキサシンの緑膿菌感受性率は高まった。こうした具体例の集積が望まれる。

 このほか、従来は医師が担当していた業務の薬剤師へのタスクシフト・シェアにも積極的に取り組むべきだろう。タスクシフト・シェアをめぐる医師の認識は柔軟に変化しつつあるようだ。先日の日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で、診断エラーを防ぐ医師と薬剤師の連携をテーマに討議が繰り広げられたが、登壇した2人の医師は「もはや診断は医師個人が行うものではない」と強調。薬の副作用による症状発現の可能性を指摘するなど、薬剤師の診断への関与に期待を示した。

 これまで診断は医師の特権で、何人もそこに立ち入らせない聖域というイメージが強かった。しかし、診断についても、タスクシェアで多職種の力を借りたいと考える医師が出てきたことは、時代の変化を表している。

 チーム医療の一員として薬剤師は欠かせない存在になり得る。そこで力を発揮して具体的な成果を示し、相応しい待遇を得ると共に、魅力的な職場であることを発信する。こうした積み重ねが薬剤師偏在の解消につながると期待したい。



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