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薬剤師の地域偏在、解消が急務

2022年07月22日 (金)

 文部科学省は、6月に開催した薬学部教育の質保証専門小委員会で、薬学部新設や入学定員増を抑制する方針を示した。今後の議論で定員抑制方針案が認められれば、関係告示を改正して制度化に向けた必要な準備が進められる見通しだ。

 6年制薬学教育が始まる前後の2003~08年にかけて薬学部新設ラッシュが続き、入学定員が増加した。私立大学薬学部の志願倍率、入学志願者数は減少傾向が続いており、入学定員充足率が80%以下の大学は約3割に達している。

 財務省の財政制度等審議会は23年度予算編成に向けた建議で、入学定員数の抑制も含めて適正な定員規模のあり方や仕組みを早急に検討し、対応策を実施するよう注文を付けた。大学の自主的な定員抑制策で対応を図る構えだった文科省も、一転して適切な入学定員規模に維持するため規制する方向に舵を切った。

 入学定員の抑制方針が制度化されれば、薬学部新設や入学定員増が原則認められない。日本薬剤師会の山本信夫会長は「一定の歯止めになる」と評価した。

 今後は、薬剤師の地域偏在問題に議論の焦点が当てられると思われる。薬剤師の需給調査で将来的に供給過剰となるとの予測が示されたが、都道府県単位で見ると薬剤師確保に苦戦している。特に病院薬剤師の不足傾向が目立つ。

 文科省も薬学部新設や定員抑制について、「各都道府県の医療計画等で将来的に地域における人材養成の必要性が示され、他の都道府県と比べて薬剤師の確保が必要と判断される場合は例外として取り扱うことが適切」とした。

 薬剤師が不足する地域では、薬学部新設や入学定員増を例外として認めるとしているものの、そのためには都道府県が薬剤師の充足状況や需要度など実態を把握しておかなくてはならない。

 しかし、厚生労働省が実施したアンケート調査で、病院薬剤師の偏在状況について都道府県病院薬剤師会の9割以上は「薬剤師不足が生じている」と回答したのに対し、都道府県の半数以上は「不足は生じていない」と認識にギャップが見られた。

 都道府県単位で薬剤師確保や医薬品提供をどう考えていくかが今後の課題となるにも関わらず、現場が感じている薬剤師不足を認識できていないのは大きな問題である。都道府県の薬務課と薬剤師会が連携し、実態把握を目的とした薬剤師の需給調査を直ちに行い、薬剤師確保の方針や確保すべき薬剤師数、緊急時を含めた医薬品提供体制などを医療計画に盛り込めるよう検討すべきだ。

 医師確保対策は長い年月をかけて取り組みが進められているが、今もなお解決していない。薬剤師の地域偏在をめぐる問題も経済的、制度的な対応など解決には様々なアプローチが必要になる。厚労省が主導して実効性の高い対応策を検討してもらいたい。



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