必要な医薬品、切れ目なく供給‐患者宅から即座に発注

タカノ薬局湘南秋谷店
タカノ薬局湘南秋谷店(神奈川県横須賀市)は、在宅患者を中心に地域住民が頼りやすい薬局づくりを進めている。患者に遅滞なく医薬品提供することを課題の一つとしていたが、医薬品発注システム「FutureENIF-WEB」を5月に導入したことで、訪問先でもタブレット等で即座に発注できるようになり、必要な医薬品を切れ目なく提供している。
相模湾を臨む住宅街に店舗を構えるタカノ薬局は、2013年の開局以来、在宅医療の患者を中心に地域住民のかかりつけ薬局として機能している。

管理薬剤師の長谷川氏
訪問診療等に注力する総合内科診療所が薬局の2階に入居するほか、逗子駅近隣の眼科や整形外科、市民病院などの外来患者から処方箋を受け付けている。1日当たりの平均処方箋応需枚数は、10~20枚。
管理薬剤師の長谷川聰氏と従業員1人で患者対応しており、在宅医療では長谷川氏が薬局と患者宅を往復する機会が多い。
患者の医薬品が途切れないよう常に細心の注意を払っている一方、在宅医療では医薬品を発注するタイミングが課題の一つとなっている。タカノ薬局では途切れたことがないものの、長谷川氏は「金曜日に患者宅を訪問してから薬局に戻って発注したら、翌週の月曜、火曜日に届く場合があるので、時間との勝負になる」と強調する。
この懸念を解消したのが、東邦薬品が開発・販売する発注システムであるFutureENIF-WEBだ。

PCによる発注。検索のしやすさを特長の一つとしている
既存のウェブ発注システムである「ねっとdeENIF」はインターネットエクスプローラー(IE)をブラウザとしているが、6月のIEサポート終了に伴い、同システムも9月末でサービスを終える。そのため、同社は現場薬剤師のニーズに応えた機能を取り入れたFutureENIF-WEBを後継に位置づけている。
タカノ薬局でも発注システムを「生命線」として、ねっとdeENIFを使用していたが、IEのサポート終了前に同社に相談。後継版が5月にリリースされることを聞き、同月から導入した。
同システムは、使い勝手の良さとシンプルさを特長としており、パソコンだけでなく、タブレットでも使用可能となっている。タブレットで患者宅から医薬品発注ができるため、長谷川氏は「絶対的に時間削減ができている。薬局に戻ってから発注するのと、患者宅で発注するのとでは納期が1~2日は違う」と日常業務への貢献を実感する。

在宅訪問の機会が多く、小回りの利くバイクで向かう
パソコンでの使用であれば、販売包装単位だけでなく、調剤包装単位のGS1データバーにも対応し、医薬品の箱がなくてもシートからコードをスキャンして発注できる。在宅医療では医療材料も必要となるが、同システムでは各包装が一覧表示されて分割商品も検索できる。長谷川氏も「箱か分割で買うかは切実な問題」として、モルヒネを充填する注射針などを分割購入している。同社は、医療材料を購入する機会が多い病院など医療機関の利用も想定している。
発注の際は、販売名、一般名、漢方番号から検索可能としているほか、発注頻度の高い商品を医薬品一覧の上位に表示されるようにした。そのため、多数の商品から目的のものを探す手間を省いている。
メモ機能活用し誤発注防止
誤発注や発注忘れを防ぐための申し送りなどに使用できるメモ機能も取り入れた。タカノ薬局でも、患者名や発注理由を記すなどして活用しているが、特に、従業員数が多い薬局での使用を想定して導入した機能としているため、長谷川氏は「通常の薬局では複数の人が発注に関わるので、コメント機能は不可欠」と指摘する。
また、同システムの発注画面は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページにリンクしており、最新の添付文書もすぐに閲覧できるため、重宝する機能だという。
販売開始から1カ月間で、ねっとdeENIFから移行するユーザーなど約100件の注文を得ているFutureENIF-WEBだが、東邦薬品はユーザーからの声を収集し、内容に応じて機能をアップデートしていく考えだ。
開局から約10年で、タカノ薬局は地域医療を担う存在となった。ただ、長谷川氏は、薬局が何をどこまでできるか患者にアピールすることが不足しており、患者にも理解されておらず、在宅医療では特にこの傾向が顕著と指摘する。
そのため、「ケアマネージャーに理解してもらったり、口コミ等を通じて薬剤師の役割を理解してもらえるよう、草の根的な取り組みをしていきたい」と目標を語った。
タカノ薬局湘南秋谷店(東邦薬品)
https://www.tohoyk.co.jp/ja/products/FutureEnif_web/