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デジタル社会の危険性にも留意を

2022年09月16日 (金)

 新型コロナウイルスの出現によって人々の対面行動は極端に制限され、様々なやりとりはウェブ・オンライン上で行われるようになった。世界中でデジタル化を進める潮流は以前からあったものの、コロナ禍においてあらゆる業界でリモート対応が一気に加速し、先進国の中で遅れていると揶揄されてきた日本でも、今では多くの領域でデジタル化が普及した。

 デジタル化推進の司令塔であるデジタル庁は、昨年9月1日の発足以来、1年が経過した。デジタル庁のミッションは「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」であり、ビジョンには「優しいサービスの作り手へ」「大胆に革新していく行政へ」を掲げている。

 1日には1年間の活動報告が公表されたが、コアツールとして位置づけられているマイナンバーカードの普及率は7月時点で45.8%と半数にも達していない状況だ。インターネットサイトでは、河野太郎大臣が普及を訴える動画を載せているが、どこまで伸びるかは不透明だ。

 デジタル・情報社会の進化形とも言えるSociety(ソサエティ)5.0が、内閣府の科学技術政策として進められている。人類の歴史上、狩猟社会をソサエティ1.0、農耕社会を2.0、工業社会を3.0、情報社会を4.0と位置づけ、それに続く新たな社会である「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」がソサエティ5.0であると説明されている。今年の日本医療薬学会年会のメインテーマにもソサエティ5.0が採用されている。

 現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉は、普通に聞くようになった。医療・医薬産業においてもDXをはじめ、リアルワールドデータ(RWD)や人工知能(AI)の活用、臨床開発では分散型臨床試験(DCT)などのデジタル、インターネットを活用した取り組みが進められている。10月に開催される第19回DIA日本年会でもDX、RWD、DCTをテーマとするセッションが行われる。

 ヒューマンエラー最小化、業務の迅速化と効率化などにデジタル化は最適であり、今後も多様な分野で普及していくだろう。一方で、金融機関や通信会社でのシステム障害が続けて起きた。デジタル化されたインフラでの障害発生は人々の生活を直撃する。インターネットでのハッキングによる被害も後を絶たない。6日には、本丸のデジタル庁のウェブサイトがハッカーによる攻撃を受けたようだ。

 人類がデジタルの権化であるコンピュータ・AIに支配されている姿をSF映画で見てきた。デジタルは有用だが万能ではない。全てをデジタルに委ねるのは危険を孕む。何らかのリスクヘッジを考慮しておくべきだ。



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