今月1日が「防災の日」であることはよく知られている。1923年(大正12年)の関東大震災が発生した日であり、時期的にも台風などが多く発生するため、この日を含めた1週間を「防災週間」とし、全国的に防災訓練が行われ、国民に対して備えあれば憂いなしの意識づけが行われている。
ただ、大震災と言えば、現在を生きるわれわれから見ると、戦前の関東大震災よりも95年1月の阪神・淡路大震災、2011年3月の東日本大震災などの大規模地震の方が鮮明な記憶として残っている。近年では、16年の熊本地震をはじめとする局地的な巨大震災のほか、台風や豪雨災害など、毎年のように時期を問わず自然災害に見舞われるケースも増えている。
こうした状況を受け、自然災害発生時における医療救護支援や早期の医療インフラ復旧が重要と認識され、多職種間での災害医療人材養成が行われるようになった。27年前の阪神・淡路大震災時には存在しなかった災害派遣医療チーム(DMAT)も02年に発足。ハードとソフトの両面で災害医療支援の活動は進化している。
発災初動期にはDMATなど、被災地以外からの医療支援活動が行われ、追って被災地での医療インフラの現状回復などが進められる。その間、医薬品供給に欠かせない薬剤師、薬局の役割も重要になる。
20年7月の熊本豪雨で被災した地域薬剤師会の災害対策への取り組みを聞く機会があった。そこで課題となっていたのは、発災直後の薬局間における被災状況の把握、被災した患者本人と服薬歴の確認だった。
薬剤師会からは、クラウド型の情報連携システムや生体認証基盤などシステムを活用した実証実験によって、これら課題の克服に一定の成果があったことが紹介された。
災害時にはICTを活用した情報の共有が非常に有効な手段と訴えており、説得力があった。
来年4月からオンライン資格確認が原則義務化される。平時のみならず、災害医療時でも安心・安全の質の高い医療を提供するために、マイナンバーカードによるオンライン資格確認が有効な仕組みとなることが期待される。
阪神・淡路大震災の被災地では、空き地に段ボールを積んだ急ごしらえの医薬品提供所で、一般用医薬品のみを無償で配布していた薬剤師の姿を見かけた。
今では、モバイルファーマシーが全国で二桁台まで普及し、実際に被災地の避難所では薬剤師による災害時処方箋などの調剤業務も行われている。その意味では、薬剤師の災害医療支援活動の中身は飛躍的に進化してきたと言えるだろう。
被災地での支援活動などの経験知を次世代に伝えていくことが、明日起きるかもしれない震災への備えに大きな意味を持つことになる。