第55回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会副会長
川上純一
医薬品医療機器総合機構安全性情報 ・企画管理部長
大澤智子
「医薬品リスク管理計画書(RMP)とは何ですか」「日々の業務で利活用していますか」と問われた際、薬剤師の皆さんに自信を持って答えていただけるようになるのが本企画の狙いである。
RMPとは、医薬品の開発、審査、市販後の一連のリスク管理を一つにまとめた文書である。医薬品の添付文書にも承認条件として「医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること」と記載されている。
RMPは、安全性検討事項、医薬品安全性監視計画、リスク最小化計画の三つで構成される。安全性検討事項は、重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、重要な不足情報の三つに分けて記載される。医薬品安全性監視計画とリスク最小化計画には、全ての医薬品に対して行われる「通常」の活動と、個々の医薬品の特性に合わせて行われる「追加」の活動がある。
添付文書とRMPではリスクの記載に違いがある。添付文書には治験等で確認された副作用が記載されているが、治験時の症例数は限られており高齢者・小児などの情報も不足している。一方、RMPには既に確認されたリスクだけでなく潜在的リスクや不足情報も記載されている。特にRMPは重要とされるリスクにフォーカスして作成されている点がポイントである。
医療現場でRMPが有用となる場面としては、新薬採用時のリスク把握の情報源、患者さんにおける副作用モニタリング、RMPで追加のリスク最小化活動と定めている患者・医療従事者向け資材を用いた情報提供などが考えられる。このように市販後安全対策におけるRMPの重要度は高まる一方で、その認知度や利活用については必ずしも十分ではないのが実状であろう。
本分科会では、PMDA、薬局、病院それぞれの立場におけるRMP利活用促進のための活動と、製薬企業の視点からRMPを通じた情報提供への取り組みについてご紹介いただく。各講演や討論を通じて、RMPを利活用した薬剤師業務がさらに進展し、患者さんにおける薬物治療の質・安全性向上に資することを期待する。
(川上純一)