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期待したい文科省の薬大支援事業

2006年08月18日 (金)

 今年度から薬学教育6年制がスタートした。漸く3カ月半が経過したばかりであり、これから試行錯誤を繰り返しながら、解決を図っていく必要のある課題が山積している。そうした中、文部科学省は6年制教育の実施に当たり、新たな薬学教育の展開を目指して、大学等に対する種々の支援事業を開始しており、その成果が期待される。

 今年度から始まった新たな支援事業は、「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成プログラム」で、そのテーマの一つとして「臨床能力向上に向けた薬剤師の養成」が設定された。

 これは、「近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用、最適な薬物療法の提供といった社会的要請に応え、医療の担い手としての質の高い薬剤師が求められている。薬剤師の養成機関である大学が、このような社会的ニーズに対応して、その使命・役割を十分に果たすためには、教育機関の一層の強化を図り、質の高い薬剤師の養成に取り組む必要がある」という考え方に基づくもの。

 まさに、薬学教育に6年制を導入した法改正の趣旨そのものと言ってもよい。この支援事業に対して、各大学から全部で55件の応募があり、審査等によって最終的に単独10件、共同1件、合わせて11件の独創性あるプログラムが採択された。選定された取り組みに対しては、今後3年間程度の財政支援が行われることになる。

 プログラムの内容を見ると、IT技術等を用いて高度先進医療や先端的創薬を担う薬剤師の育成、大学付属病院や地域の病院・薬局との連携による患者を軸においた教育の模索など、ユニークな提案が目立つ。さらに、付属薬局を活用して実践的な教育を試みる大学もあり、実に多彩な内容になっている。

 いずれも、今後の薬学教育のあり方を探る上で、貴重な試みと言えよう。この成果が注目されることは疑いのないところだ。

 一方、現在の医療の現場では、癌化学療法、院内感染制御、褥瘡対策など、チーム医療を柱とした専門薬剤師の育成が課題となっている。また、実際にそれらを実践する薬剤師も生まれ始めており、今後さらなる充実が求められる。

 さらに、先の医療制度改革法では、薬局が医療提供施設に位置づけられた。改正医療法では、地域完結型の医療提供体制を構築していくため、病院と診療所の機能分化の促進・連携、さらに薬局や訪問看護ステーションといった医療提供施設と医療機関が有機的に連携し、在宅医療等を推進していくことが目標となっている。

 こうした新しい体制の中で薬剤師が活動していくには、どのような資質が要求されてくるだろうか。病院の場合は、やはり高度医療に対応できる高い専門性を持った人材が求められるであろう。

 薬局は調剤技術ばかりでなく、医薬品の適正使用を図るため、服薬指導や薬歴管理といったマネジメント能力が、従来以上に重視されてくると思われる。もちろん、患者・顧客とのコミュニケーションスキルも重要な要素だ。さらに、新しい一般薬の販売制度でも、薬剤師は重要な役割を引き続き担うことになる。

 今回、文科省が採択したプログラムは、各大学で取り組みが進められるが、その成果は広く公表され、他の大学も共有できる仕組みである。薬剤師の将来像を模索する上からも、各大学の試みが実を結ぶことを期待したい。



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