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遠隔販売の行方気になる制度改正

2024年03月08日 (金)

 先日、日本初の内臓脂肪減少の効能を有する要指導医薬品「アライ」の発売日が発表され、一般メディア各社も大きく報道した。注目されたのは、薬剤師の関与は必要になるものの、抗肥満対策の医薬品が医療機関での受診を経ずに、ドラッグストア、薬局などの店頭で自らの意思によって購入できるようになる点だろう。

 一方、「アライ」のようなOTC医薬品の登場と並行して医薬品の販売制度の見直しも進められている。1月には厚生労働省が11回にわたる「医薬品の販売制度に関する検討会」で行われた議論の取りまとめを公表した。4月から関連する医薬品医療機器等法の改正に向けた議論が始まる。

 取りまとめの中では、具体的な方策として「安全性が確保され実効性が高く、分かりやすい制度の見直し」と「医薬品のアクセス向上等のためのデジタル技術の活用」を基本とし、▽処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売▽濫用等の恐れのある医薬品の販売▽要指導医薬品▽一般用医薬品の販売区分・販売方法▽デジタル技術を活用した医薬品販売業のあり方――について、それぞれ細目を挙げて、見直しを行う方針が示された。

 注目したいのは、濫用等の恐れのある医薬品販売とデジタル技術を活用した医薬品販売のあり方である。濫用等の恐れのある医薬品販売は20歳という年齢で区切り、販売時の購入者に対する状況の確認と情報提供が義務化される。20歳未満には複数・大容量の製品の販売が厳格化される方向だ。

 そもそも、医薬品は濫用目的で購入するものではないが、品目によっては厳格に販売規制が敷かれているたばこや酒類並みの取り扱いになるのだろうか。濫用の恐れのある医薬品に関しては、販売者側にも一定の罰則規定を設けることも一つの抑止力になるかもしれない。

 また、デジタル技術を活用した医薬品販売は、いわゆる薬剤師等の資格者による遠隔販売が対面と遜色ない情報提供を行えることが前提である。それは、ICT技術の普及で一定程度可能なのかもしれないが、「物」としての医薬品の取り扱いには課題が残る。

 現行法では、医薬品物流倉庫でも管理薬剤師の配置が義務付けられている。取りまとめでは、薬剤師等が常駐しない受渡店舗における販売は、その店舗に紐付いた管理店舗が責任を有するとされ、受渡店舗を実地で管理する現場責任者は非資格者でも可能としている。

 そうなれば、医薬品の保管管理責任の法的位置付けも緩和されることになる。管理店舗以外の店舗に医薬品を在庫しても、薬機法上の規制は受けないことになるのか不明である。

 今後の議論を待つことになるのかもしれないが、注視したい点の一つだ。



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