
松田社長
協和発酵キリンは1月29日、2010~12年度の3カ年中期経営計画を発表した。中核となる医薬事業では、経営資源を効率的に集中投入する方針を表明。開発パイプラインの迅速な進展を最大の目標に掲げ、15年以降に迎える自社抗体医薬の収益化に向けた、足元固めの時期と位置づけた。最終年度の売上高は2250億円、営業利益(のれん償却前)は450億円とし、研究開発費の効率化によって成長を維持する計画だ。
今回の中計では、事業ポートフォリオの選択と集中を進め、医薬事業とバイオケミカル事業に経営資源を集中投下する。特に中核となる医薬事業では、15年以降の自社抗体医薬の収益化を視野に、開発パイプラインの進展に全力を挙げる方針を打ち出した。1月29日に都内で開いた中期経営計画説明会で、松田譲社長は「開発パイプラインを、一つでもスピーディーに上市へつなげる3カ年」と位置づけていく考えを強調した。
そのための基本戦略として、研究開発では、世界最高水準の抗体技術を核に探索研究を進め、開発パイプラインを充実させると共に、毎年4品目の開発入り、毎年2品目以上の製造販売承認の取得を目指す。
生産体制では、17年までに100億円超を投じて生産拠点の再編を完了させ、収益力を強化する。四日市工場(三重)と堺工場(大阪)を閉鎖し、14年に稼働する第一ファインケミカル新棟(富山)に再編。富士工場(静岡)の経口製剤の生産能力を宇部工場新棟(山口)、注射製剤の生産能力を高崎工場新棟(群馬)に移管し、富士工場を再編後の17年に閉鎖する。生産拠点の再編による経費削減効果は、最大50億円に上る見通し。
海外事業は、アジア自販体制の強化と共に、欧米での販売体制整備に乗り出す方針を打ち出した。特にアジアでは、6拠点に展開する現地法人を活用し、売上高の拡大を図ると共に、アジア共同治験に積極的に取り組んでいく。中計最終年度には、アジア売上高を現行の約100億円から約140億円に引き上げたい考え。松田氏は「海外事業は、自社製品を中心に展開することになるが、あせらず最適な時期に最適な判断をしていきたい」との考えを示した。
12年には、自社抗体医薬の第1号となる抗CCR4抗体「KW‐0761」を発売する予定で、いよいよ抗体医薬の収益化が視野に入ってくる。松田氏は「今中期計画以降、ほとんどの抗体パイプラインが後期開発段階を迎える」との認識を示した上で、「研究開発費を効率的に使って成長を維持し、15年以降に抗体医薬が収益につながる方向へと持っていきたい」と語った。