日本薬剤師会がまとめた「薬剤師の将来ビジョン」によると、2025年を見据えた「薬剤師の絵姿」として、「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」を持つことの意義が国民に浸透し、患者は信頼できる薬局・薬剤師を自身の「かかりつけ」として選択し、利用することが一般化している――との像を描いている。
ところが、東大阪市では来年度から「かかりつけ薬局制度」を実施するという。日薬の“ビジョン”を10年も先行しており、歓迎すべきことであろう。ただし、生活保護供給者を対象とした限定的制度ではある。
既に政府は今年5月に、生活保護法改正案を閣議決定。生活保護給付の中で、増え続ける医療扶助を適正化するため、後発品の使用を促すことなどを盛り込んでいる。医師が先発品を指定しない限り、原則として後発品を使うよう促すことを法制化。さらに、医療機関の指定(および取り消し)要件も具体的に規定するとし、これまでくすぶっていたことが現実化したといえよう。
さて、今回の決定は生活保護に関わる各種制度、あるいは医療倫理の側面など、複雑に絡まっており、成否の判断は難しい。しかし、東大阪市では、これらの流れを追い風に「かかりつけ薬局制度」という名のもとに、医療扶助適正化を推進することを決定したと推測される。背に腹は替えられないといったところだろうか。
薬に関わる制度改正の問題で、「お金」絡みでなかったことは、記憶にない。直近でも、一般薬のネット販売の全面解禁。流通業者が医療の世界に踏み込み、要は、自ら責任はとらないが一般薬を全て扱わせろという乱暴な議論だった。
後発品の使用促進も、もともと医療費に占める薬剤料を引き下げるべく、様々な仕組みが導入されてきた。つくづく、お金の話から離れることができない職域だ。それだけ医療の世界が、大きなお金を動かすグループになっているということの裏返しでもあり、薬局・薬剤師の社会的責任はますます高まっている。自身が思う以上に、重要なキーパーソンであることを認識する必要があろう。
さて、かかりつけ薬局制度で「表明されている目的」を見ると、「(生活保護受給者の)薬の重複使用や相互作用による副作用などの健康被害を未然に防止して健康保護を行い……」とある。まさに地域の薬局・薬剤師が、一人の患者に対し、ぜひとも行っているべき業務であろう。
面分業の一部地域や薬局では、「かかりつけ薬局・薬剤師が当たり前のこと」となっている。患者も十分にメリットを感じているからにほかならない。だが全国的には医療機関ごとに薬局を転々としているのが現状だ。
これを機に、各地でかかりつけ薬局を「制度」化し、結果的な医療費適正化の実績を作るのも一つの手立てだ。当然、患者の医療安全は向上するはず。最終的に患者が安心できる薬物療法の提供が、薬局・薬剤師の大きな存在意義となるだろう。