対人業務のスキル習得へ

狭間氏
「質の高いコミュニティファーマシストの育成」を理念に掲げる薬剤師あゆみの会(本部大阪市、狭間研至理事長)。薬剤師認定制度認証機構(CPC)の認証を受けた生涯研修制度のプロバイダーとして、薬剤師向けの様々な研修プログラムを提供している。2005年の設立から13年が経過。この間、薬学6年制の導入、地域包括ケアシステムの概念が示されるなど、薬剤師を取り巻く環境も大きく変化。狭間理事長は「設立当初から掲げるコミュニティファーマシストの育成の方向性もより明確になってきた。患者のための薬局ビジョンで示されている、対物業務から対人業務へシフトしていくために必要な薬局薬剤師のスキルが学べる機会を提供していきたい」と話す。
薬剤師あゆみの会には、中小規模の調剤薬局18社(正会員13社、準会員5社)が加盟(5月18日現在)。所属薬剤師総数は564人に及ぶ。もともと各企業共通の課題であった新人、中堅薬剤師の教育研修に共同で取り組もうとしたのが設立のきっかけ。研修プログラムの中身は各企業の現場での課題を積み上げて構築されているだけに、より実践的な内容となっている。
会員以外にも全ての薬剤師を対象とした「認定薬剤師」取得研修のほか、能力クラス別研修コースを提供。現在、新人薬剤師から薬局管理者までを対象とした段階別能力クラス別研修コース(ジュニア、ミドル、シニア、エグゼクティブ)を設定。能力評価として医療薬学中心の知識と、それを現場で生かすことのできる実務能力をそれぞれ判定し、一定基準を満たせば、段階的にステップアップさせる研修制度。能力クラス別研修コース受講者は、能力クラス別の一定の研修が修了後、本人の希望で能力クラス昇級の能力検定試験の受験が可能。会員には能力クラスの合格証を発行している。
能力クラス別研修の中でも、特に注力しているのがジュニアクラスへのステップアップを目指す新人・フォローアップ研修だ。会員でなくても参加できる新人薬剤師向け研修を2年間で計3回のスケジュールで実施。初年度には毎年5月に3泊4日の合同合宿形式での研修会を開催。学生時代に学んだ知識・技能・態度を体系化し、地域包括ケアシステムの中で活躍できる「かかりつけ薬剤師」を目指し、調剤業務、在宅医療、OTCを活用したセルフメディケーション推進などの研修プログラムを設定。日々のルーチン業務ではなく、医療の最前線での業務という意識改革を主眼とした内容を中心に取り組んでいる。狭間氏は「中小規模の薬局は、新人採用後の研修で悩むところも多い。そうした企業が合同で新人教育を実施し、また薬剤師も同期と切磋琢磨できる雰囲気ができるのも利点」と説明する。
ミドルクラスでは、初級管理者研修会のほか、管理者の自立と自律的な成長支援を目的とする上位管理者研修会も開催。今年度は、「アドヒアランスと受診勧奨」をテーマに『かかりつけ薬局づくりにつながる情報提供』について事例に基づき考え方と構築の手法を学ぶ。▽患者視点に立ち、患者の行動変容につなげる情報提供のあり方▽個の薬剤師だけではなく薬局、組織として取り組みを実施する手法▽組織として目指すべき目標・成果を設定するために必要な考え方――などの習得を目指す予定である。
狭間氏は「腕の良い薬剤師とは、薬物治療を適正化できる薬剤師だと思う。加えて、質の高いコミュニティファーマシストとは何かというと、患者さんを良くする力を持つ人で、そこにはOTCの知識や、在宅医療のスキル、さらには検査値を読み解く力も必要になる」とする。そのうえで今後「かかりつけ薬剤師」に必要な保険調剤、在宅医療、統合(補完)医療、OTCなどの各研修も企画、提供していく考え。薬剤師あゆみの会では、毎月開催している理事会の中で保険薬局の現場で必要な要素を拾い出し、その情報を共有し、研修内容を組み立てている。
これまで東京と大阪で開催している在宅実践オープンセミナーは、在宅医療の最前線で活躍する講師を招聘し、シンポジウムの開催や実践事例などの報告発表を行ってきた。今後、テーマを「在宅」だけではなく幅広く取り上げていく計画である。
一般社団法人 薬剤師あゆみの会
http://www.ph-ayumi.org/